第17話 茉那とのクリスマス①

あの日以来、美衣子は茉那と2人でいるようになった。灯里が茉那に嫌がらせをするのをやめてさえくれれば、今すぐにでも仲直りしたいのに、と思いながら日はどんどん過ぎていった。


教室で誰とも話さず一人で窓の外ばかり眺めている灯里を見るのは心苦しかった。美衣子と仲良くなるまではたくさんのクラスメイトに囲まれていたような子だったのだから、なおさらだ。


(結局、クリスマスまでに灯里とは仲直りできそうにないわね……)


灯里が茉那に嫌がらせをするのをやめてくれそうにない以上仲直りするのは難しそうだし、一緒にクリスマス会をするのも難しそうだ。


「ねえ、茉那。終業式の日の帰り、茉那の家に行っても良いかしら?」


「終業式の日って……?」


「クリスマスよ。何か予定があったら別にいいけど」


「ううん、予定なんてないよ! ぜひ来てよ!」


声のトーンを上げて、美衣子の方を見ながら目を輝かせ、とても嬉しそうに茉那が答えた。茉那のこういうところが可愛いな、と美衣子は思う。


「じゃあ決まりね。何かお菓子でももって茉那の家に行くわね」


去年の冬は灯里と一緒に美衣子の家でクリスマス会をした。そのときの思い出とか余韻みたいなものがうっすらあるから、今年は美衣子の家に集まるのはやめておいた。


美衣子の部屋には灯里との思い出がまだ残っているようで、そこでクリスマスに茉那と2人きりで過ごすことは、灯里にも茉那にも悪い気がしたから、それなら今年は茉那の部屋にお邪魔した方が良い。美衣子はそんなことを考えながら、目に見えて楽しそうな茉那の横をのんびりと歩いていた。


それから数日が経ち、クリスマス当日になる。美衣子は茉那の家に入ると、靴を脱ぐ前に茉那に紙袋を渡した。


「とりあえず、ケーキ焼いて来たわよ。できはイマイチだったかもしれないけど」


美衣子がパウンドケーキを持って来たのを見て、茉那が目を丸くした。


「これ、美衣子ちゃんが焼いたの?」


袋の中を覗きながら、茉那が驚いている。


「ええ、そうよ。あんまりうまくいかなかったかもしれないけど。マズかったら遠慮なく言ってね。そのまま持って帰ってママとパパに押し付けるから」


美衣子が冗談交じりに言っている間にも、茉那は焼いてきたパウンドケーキを見て、目を輝かせてくれていた。


「そんなことないよ! 絶対に美味しいよ」


「まだ食べてないのにわからないでしょ?」


元気に答える茉那を見て、美衣子は苦笑した。でも、悪い気はしなかった。


「とりあえず、急いでお皿とフォーク持ってくるから美衣子ちゃんは座ってて!」


「別に急がなくてもケーキは逃げないわよー」


そんな美衣子の声を聞く前に、茉那はキッチンに大慌てで向かって行った。


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