第50話 もうすぐ3年生①
高校2年生の最後の日、茉那は美衣子と2人で甘い時間に浸っていた。
茉那にとっての高校2年生の後半は、美衣子のおかげでとても楽しいものになった。灯里に少し嫌なこともされたけど、それを加味しても美衣子と過ごした半年間はとても楽しい時間だった。
だけど、今日はもう3学期も終わり終業式になる。クラス替えがあるから、別々のクラスになってしまうと来年度からは美衣子と会える頻度も少なくなってしまう。そのせいで茉那は美衣子の前なのにずっと浮かない顔をしてしまっていた。
でも、優しい美衣子はそんな茉那の様子に気がついてくれた。
「今日はもうちょっと学校に残ろっか」
お言葉に甘えて茉那は美衣子に一緒に学校に残ってもらう。
少しの間2人で静かな時間を過ごしていると、美衣子は不意に茉那に顔を近づけて、メガネも取り、前髪もそっと上にあげてしまった。そのせいで、茉那は美衣子としっかりと視線を合わせなければならなくなってしまう。
そのまま美衣子は突然自分のカバンから小さなメイクポーチを取り出して、茉那の顔に触れてくると、メイクを施しだした。
突然のことに驚きはしたけど、もちろん嫌な感情は無かった。ただ、美衣子の優しくて甘い吐息が触れてしまいそうな距離で作業をされてしまい、恥ずかしくなってしまう。
間近で見る美衣子の顔はやっぱり茉那に安心を与えてくれる。
ルックスについて言えば、美衣子の顔立ちは特別綺麗だったり可愛らしかったりするわけではない。だけど、どこか魅力的な顔立ちをしていた。そして一緒に居ると落ち着くような雰囲気を持っているし、なによりどこか幼馴染の美紗兎に似ている気がするのだ。
どこが似ているのかと言われたら困るけれど、なぜか美衣子と同じクラスになって、初めて後ろ姿を見たときに美紗兎に似ていると思ってしまったのだ。それ以来、茉那は美衣子のことが気になってしまっていた。
茉那は1学期は美衣子とは接点もなく過ごしていたし、当然高校2年生の最後まで接点はないものだと思っていた。ただ美紗兎と雰囲気のよく似た子と同じクラスだったというだけだったのに、修学旅行の日、茉那はほんの少しの時間だけ美衣子と一緒に行動することになってしまったのだった。
それが、茉那にとって大事な出会いになるとも知らずに、美衣子に探しものを手伝ってもらったのだ。
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