第22話 テスト勉強どころじゃない①

「茉那の家に入るのはクリスマス以来ね」


2ヶ月ぶりくらいに茉那の部屋に入った美衣子は、無意識のうちに手をこすり合わせて温めていた。


今年の冬は例年よりも冷え込んでいて、家の中も暖房器具を付けるまでは冷蔵庫の中みたいに寒かった。


「ごめんね、美衣子ちゃん。すぐにストーブ付けるから」


茉那の部屋にはエアコンはないので、急いで電気ストーブを付けていた。


「いいわよ、そんなに急がなくても。いきなり茉那と一緒に勉強したいなんて言い出しのはわたしなんだし」


3学期の期末テストも近づいていたので、茉那を勉強に誘った。いつもは学年トップの灯里がいたからテスト前には勉強を教えてもらっていたけど、残念ながら今は仲違い中だから頼ることはできない。とはいえ、一人で集中してテスト勉強を進められる気もしないので茉那を誘ったのだった。


「今年はいつにも増して寒いわね」


「うん、もう5回くらい雪積もったし、いつもよりも寒いね」


普段は一冬で3回程雪が積もれば多いような地域なのに、今年はもう5回も積もっていた。もう3月になろうかという時期なのに、まだまだ寒さは続いている。


「桜が咲くのも遅い時期になりそうね」


この分だと4月になってもまだまだ寒そうだし、桜の季節はしばらく先になりそうだな、なんてことを美衣子が考えていると、茉那が緊張した様子で尋ねてくる。


「ねえ、美衣子ちゃん。桜が咲いたら一緒にお花見しに行かない?」


「いいわよ。お弁当でも作っていくわね」


「やった! ありがとう!」


茉那が胸の前で小さくガッツポーズをしながら、嬉しそうに笑う。その頃には灯里と茉那が仲良くなってくれていて、3人で一緒に行けたらいいな、なんて考えてみるけど、あんまり現実的ではなさそうだ。


(茉那と行く日と別の日に灯里と一緒にお花見に行こうかしら)


知ってはいたけど、やっぱり灯里と疎遠になっているとどこか物足りない日々になってしまうし、そろそろ仲直りしておきたいのが本音である。ただ、そうなるときっと茉那と今みたいに堂々と会えなくなってしまうから、それも困るのだけど。


ただ二人と一緒に仲良くしたいだけなのに、どうして灯里と茉那を天秤にかけるようなことをしなければならないのだろうか。


「はぁ……」


考え事をしていたからか、美衣子は無意識にため息をついてしまっていた。


「美衣子ちゃん、どうしたの?」


「ううん、なんでもないのよ」


こんな悩み茉那に打ち明けられる訳もなく、話を変えるために慌ててシャーペンを握った。


「さ、テスト勉強しましょうか」


「え、うん……」


茉那がまださっきのため息のことが気になっているのか、元気がなさそうにしている。

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