第20話 灯里とのクリスマス①

(やっぱり茉那って可愛いわよね……)


美衣子は、茉那とのクリスマスパーティーを終えて一人でのんびりと家に帰っている途中に、ふと先程じっくりと見た茉那の素顔を思い出し、頷いていた。恋愛感情とかは無いけれど、茉那が可愛らしいことは事実だし、その事実に気づいているのがきっとクラスで美衣子だけという事実はなんだか誇らしかった。


そんなことを考えて歩いていると、家の前に人影があることに気が付いた。それが誰であるかは、遠目であってもすぐにわかってしまった。何度も見ているその子を間違えることはあり得ない。


「灯里……」


「遅かったわね、美衣子」


灯里は寒さで体を縮こまらせながら、美衣子の家のブロック塀にもたれかかっている。耳を真っ赤にして、鼻先までマフラーに埋めていた。


「今年はクリスマスパーティーしないと思ってたから」


こんなに寒そうな状況で家の前に居られると、さすがに美衣子にも罪悪感が湧いてしまう。


「わたしも今年は美衣子と一緒にクリスマスパーティーは出来ないと思っているわ」


「それじゃあ、なんで待っていたの?」


「偶然ここを通ったから、ちょっとここに立ってスマホをいじってただけ。そしたら偶然美衣子の家の前だったみたいね」


「偶然、ね……」


その時間が”ちょっと”ではないことは、寒さのせいでリンゴみたいに真っ赤になっている耳が物語っている。


「嘘つきたいならせめてイヤーカフでもしなさいよね」


美衣子が真っ赤になっている灯里の耳をギュッと触ると、灯里が小さな声で「ちょっと」と声を出した。


「手袋してるし、握ってたらそのうち温かくなるでしょ」


「わたしは何もつけていない耳なのに、美衣子だけ暖かくしているなんてフェアじゃないわね」


灯里がクスっと笑ってから美衣子の右手首を握ると、ゆっくりと手袋を取った。


「素手にしてよ」


「……わかったわよ」


手袋を取られてしまうと、外の空気は想像以上に寒かった。


だから、冷たくなっているはずの灯里の耳が随分と温かく感じられた。これではどちらが温めているのかよくわからない。


「もうあったまったでしょ?」


「まだ全然あったまってないわ」


「これ以上やったらわたしの手がかじかんじゃうんだけど」


「いいじゃない。ひっつくくらいかじかんじゃったらいいのよ。意地悪美衣子の手なんてわたしの耳にくっついちゃえばいいんだわ」


「意地悪って……」


灯里の眼を見つめると、寂しそうに美衣子のことを見ているのがわかった。


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