短編:えりか

Take_Mikuru

短編:えりか

〇おしゃれなレストラン・中・夜


日下部エリカ(24)と春日部悟(24)がデーブルに向き合って座っている。2人の右側には大きなガラス張りの窓があり、そこから夜の海が見える。エリカはドレス姿、悟はT-シャツに短パンを履いている。2人の前にはステーキとワインがあり、エリカはフォークとナイフ、悟は汚い箸を使って食べている。


悟「うんうん、うっめぇ~、ヤバイなこれ」


悟は一気にワインを飲み干し、左を向いてグラスを上げる。


悟「ワインもう一杯!」


品のいいウェイターが2人のテーブルに来て、悟のグラスにワインを注ぎ、去っていく。悟はすぐさまワインを飲み干し、気持ちよさそうに息を吐く。


悟「っはぁ~」


エリカ「汚い」


悟「え?」


エリカ「あなた、さっきから酷すぎるわよ」


悟「何が?」


エリカ「まず服装、食べ方、食べるのに使ってるもの、飲み方、ウェイターさんの呼び方、つまりあなたの存在全てが酷すぎるのよ」


悟「え~、ちょっとエリカ~、それは言い過ぎじゃねぇ~かぁ~、なぁ~?」


悟がウェイターたちの方を向く。ウェイターたちが困ったように笑う。エリカがウェイターたちの方を見て頭を下げる。


エリカ「申し訳ございません」


エリカは悟を見る。


エリカ「あなた、こっち向いて。話してるのは私よ。彼らは仕事であそこに立ってるだけなんだから」


悟「へぇ~」


悟はエリカを見る。


悟「つまんね~の、せっかくそこにいるのに、会話に入れちゃダメなんだ」


エリカ「そうよ、友達じゃないんだから、じゃあ、電車の中で隣に座ってる人に話かけるの?」


悟「かけるよ、いい脚してますね~って」


エリカ「それ、冗談よね」


悟「いいえ、ものほんです」


エリカ「・・・私帰るわ」


エリカは立ち上がり、ドレスを持ち上げて歩き去ろうとする。


悟「どこ行くんだよ」


エリカ「お家に帰ります」


悟が突然立ち上がり、エリカは驚いた様子で立ち止まる。


悟「それはできない」


エリカ「私の勝手でしょ」


悟「いや、今日俺はお前に誘われてここに来た。まだディナーが終わってないのに誘った本人が帰るのはおかしいだろ。それこそ、酷すぎるだろ」


エリカ「あなたは今、電車で隣に座った人に対して、いい脚してますね~って言うって言ったわよね、それはれっきとしたSexual Harrasmentです。そんな人と食事なんてできません」


悟「セクシャルハラースメントね~、確かにそれを伝えた女性は皆嫌そうな顔して逃げてくよ。今の君みたいにね。でも言っておくが、その周りの男性諸君はニヤニヤが止まらないよ」


エリカ「それはあなたをあざ笑ってるのよ」


エリカは急ぎ足でテーブルを去り、出口の方に向かう。悟はさっきまでエリカが使っていたナイフを取り、エリカの方に思いっきり投げる。ナイフがエリカのすぐ横を通り過ぎ、エリカの方に歩いてきていたウェイターの心臓にぶっ刺さる。ウェイターは叫び声を上げて床に倒れる。エリカも叫び声を上げて立ち止まる。他のウェイターたちが一斉に刺されたウェイターに駆け寄り、焦った様子で話したり行動している。エリカは恐る恐る悟の方を向く。悟は刺されたウェイターを見ている。


悟「いや~、変なとこにいたな、ああいうのを無駄死にっつうんだな、なぁエリカ?本当は君が刺されるはずだったのになぁ~」


エリカ「あなた一体何者なの?」


悟「本物だよ。本物の殺人鬼」


エリカは激しく動揺した様子で入口に向かって走り出す。悟は声を上げて笑う。


悟「いや嘘やん!エリカ!嘘やん!殺人鬼な訳ないやん!これが初犯ですよ!はっはっは!」


エリカは立ち止まり、涙目で悟を見る。


エリカ「あなたほんっとに狂ってるわ」


悟「あ~ベイビー。あたりまえだろ。僕は君に狂っているんだ。じゃなきゃ今ここにいないよ」


エリカ「・・・あなたを誘ったのが間違いだった、、、いつも会社で一人でいるから可哀そうかと思って誘ったけど、大間違いだったわ」


入口が勢いよく開き、警察が3人入ってくる。ウェイターが3人に駆け寄り、悟を指しながら何かを言っている。


悟「ああ、もうなんでこうなっちまうんだ。俺は君のことが好きなんだよエリカ。入社してからずっとな。新卒研修の頃からずっと君の脚を見てた。君の脚はいつ見ても絶品なんだよ」


警察3人が一斉にエリカの前に立ち、拳銃を悟に向ける。


警察1「そこを動くな!両手を上げろ!」


悟「だから今日は本当に残念だった、長めのドレスなんか履いて来やがってよぉ!!!!」


エリカは唖然としている。警察3人が数歩悟に近づく。


警察1「さっさと両手を上げて跪け!」


悟「頼むエリカ、逮捕される前に、一度だけ、君の性欲をこの上なく擽る脚を見せてくれ。フルで。膝までとかはなしだぞ!?」


警察1「最後の警告だ、両手を上げて跪け!」


悟「脚見せろ脚を!!!!!」


悟はもの凄い形相でエリカに向かって走り始める。警察は一斉に発砲し、悟は一瞬にして血まみれになり、床に倒れる。血が床に広がっていく。そこにいる全ての人が呆然と立ち尽くしている。先ほど悟にワインをついだウェイターが遠目から警察、エリカ、悟がいる辺りを見ている。


ウェイター「・・・今のは一体なんだったんだ、、、」

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