第7話 ディナーの前に、疑問だけでも
「……ここが」
案内されながらも食堂の部屋に到着すると想像以上の広さに思わず感嘆の声を漏らしてしまう。部屋には既に先ほど見た顔ぶれの4人の内3人が集まって来ていた。
糸蘭は疲れたのか眠たそうに欠伸をすれば眼を擦っているし、協は恥ずかしそうにソワソワとしている。
すると、そのうちの1人の彼女が此方を振り抜いて満面の笑みを浮かべてくる。
確か名前は㐮衣と言っただろうか。
「もしかしてさっきの…㐮衣と隣に座る?座る?座っちゃう〜〜?」
「……やめておくわ」
「えー、つまんないの〜〜!りいりって」
子供のようにぷくっと頬を膨らませて機嫌を損ねた彼女。なんて勿体無いとこれ以上本人に言ったら怒られそうな疑問が頭の中でついつい発生してしまう。
しかし言うのはやめようとすぐ口篭った。
「ねえー今何か変なこと考えたでしょ!そう言うのちゃんと見てるんだからねっ」
「うるさいぞ……全く。りいりはそんなこと考えてないわよお」
誤魔化そうと心外そうに此方も頬を膨らませているともう一度ドアが開く。
なんとルミの姿であった。
何か重要な話をしたがっているのか否か先ほどより表情は引き締まっているように見える。
「これからこの寮で過ごすことになったりいりに向けて改めてパーティーを開きたい…」
真剣な眼差しで3人を見るともう一度ドアを閉めて何か思い出した様子で何処かへ移動していった。
「アイツ、ほんと何してえんだろうな。わかんねえんだよ……」
何か不満そうに先ほどまでルミが居た場所を見つめている糸蘭。
気持ちは少しわからないでもなかったがルミは私のことを精一杯歓迎しようとしてくれている…。そんなルミの様子を思えば糸蘭と同じ心情をいつまでも抱いていることができなくなっていた。
「…で、でも僕は良いんじゃないかなって。あんなルミさんを見るの初めてだし」
すると口をつぐんでいた協も思い切って自分の意見を伝えようと声を出したのだ。
「お前……ッ」
「…あ、ごごごごめん…なさ…ぃ」
逆らうような発言と見做したのか少し怒っているような声色の糸蘭の様子。
それを見たせいか協は身体だけ震えているかと思えば顔は青ざめているし、更に声までビクついている。
なにより最後の“い”がきちんと発音できていなかった。
糸蘭がここで感情をぶちまけて仕舞えば協は二度と離さなくなってしまいそうな…
そんな圧を感じた。
すると思いがけぬ回答が返ってくる。
「良いこと言うじゃんか」
いつのまにか先ほどより顔が明るくなった糸蘭は尊敬の眼差しを協に向けている。
なんとか一安心と思いながらもあれ、と疑問に残っていたにも関わらず今まで突っ込んでいなかったことについてを思い出した。
勇気を出して聞いてみる。
「仲直りしたところで…聞きたいけど、ロタさんはいったいどうしたの?」
そう尋ねれば3人は目を丸くして私を見た。
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