第4話 4人とあともうひとり

「まあた喧嘩ですの?糸蘭さんったら」


呆れ気味で彼を見つめる彼女の顔だが世話焼きな一面が垣間見える一言だった。


濃桃色の髪を巻き髪にし、澄んだ青空のような瞳を瞬かせて立っているワンピース姿の彼女はとても魅力的なオーラが出ている。


でもまず思ったことが一つ。


今の私には勇気を出して聞いてみることしか頭になかった。


「じゃあコ、コイツの名前って…」


私が問いかけるように呟くと彼女は目を丸くさせている。


急に話しかけたのだから混乱するのもしょうがないことかもしれないのだが。


「あら?」


私の方を向くと彼女は不思議そうだったがすぐに嬉しそうに笑みを浮かべた。


「ええ、そうですのよ。貴女の隣の彼は糸蘭いとらって名前で、発音的には可愛さがあるかもしれないけれど少し…」


「おいそれ以上はやめろって!」


少年──彼、糸蘭は顔を赤くしながら話を引き止める。


「どうしてかしら?」


意地悪そうに彼女は首を傾げている。糸蘭はギクっと震えて恐怖している様子だ。


「ま、いいわ」


“冗談よ”とでも言うように笑みを浮かべながらも彼女はすぐ会話から退散する。


その姿を見ると糸蘭はため息をついた。


「アイツの言った通り、俺は糸蘭って名前だよ…嘘つく気がないから事実を言うけど代わりにお前の名前も言ってもらうからな」


名乗る前に名前をバレてしまったせいか凄く機嫌が悪いようだ。


「感情豊かですこと…」


揶揄われてもいよいよ諦めたのかスルーし始めた。


それにしてもすぐ名前を言ってもいいのだろうか。私の名前を…


「わ、私の名前はりいり!」


もうこの場を凌ぐにはそうするしかないと選択肢を選ぶことは避けることにした。


動揺しながらも一言、名を告げる。


「あら可愛い名前ですわね〜。あたくしの名前は雨葉奈うばなロタ、以後お見知り置きを♪」


フレンドリーに述べるロタ。


まさか私の名前を褒めてくれるとは思いもしなかった。少しばかりついつい嬉しくなってしまう──


「ほらほら、お2人もきちんと自己紹介なさって?」


いつの間にか後ろにいた2人も此方に近づいてきていて、軽く会釈をした。


「のいのいパワーでキミのことも虜にしちゃいたいな〜えへへ、㐮衣のいだよ♡」


「...僕、かのう


2人ともなんだかんだで独特な雰囲気や世界観を持っていると本能が察知している気がする。


「よ、よろしくっ!」


3人とも懸命に挨拶をしてくれたのにも関わらずそっけなく返してしまったことに即反省した。


名前が判明した4人の糸蘭・ロタ・㐮衣・協に向けて挨拶をすると、またもや一つ疑問が発生する。


最初に私に心配をしてくれた──あの子は……

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