第2話 変わり映えのないはずの

俺は3月に中学を卒業したばかりだ。


そして春からは高校生活が始まる──が、そんな俺にも一つ悩みがあった。


悩みというのは果たして、俺にも初恋と言う感情を抱くことが出来るのだろうかと言う事である。


そう思い始めたのは卒業式前の高校入試が終わった後のとある日の話である──



「お前って好きなやつできたことある?」


「いきなりなんだよ」


「お前の恋バナ聞いた事ねぇなって思ってさ。いつも俺の話聞いててつまんなそうだから申し訳ないんだよ」


突然の友達からの言葉に体全体が硬直した。


ちゃんと相槌を打って聞いていたはずなのにいつからそう思われていたのだろう?


友達が好きな女子のタイプについて語っていたときはなるほどなと理解したように頷いた筈だし、友達がその好きな女子と付き合った時にも驚嘆して祝福したはずなのに──


あの会話を得てからその友達とは連絡を絶った。


その理由は俺にはまだよく理解できず仕舞いで終わってしまった。


いつも通る人気のない公園をいつものように歩いて行こうとすると珍しく誰かが居るのが見えた。


そのままつっ立って眺めているとどうやらベンチに座っているのは女子らしい。


するとちょうど後ろにちょうど小学生女子2人が通った。


「この公園さー、幽霊出るらしいよ」


「え?じゃああのベンチに居るお姉さんって……」


そう噂話を繰り広げると小学生女子2人チラッと俺の方とベンチに座っている女子の方を見ながら顔を見合わせている。


まさか──とは、思うが。


あのベンチに座っている彼女こそ本物の噂通りの幽霊なのかもしれない。


視線を気にせずこっそりと俺は公園の中に入っていき、恐る恐るベンチに近づいて行った。




くるくる、くるくるとまるでお人形のように廻るステージ上の私が───


幸せそうに笑みを浮かべながら踊っている様子が見える横に、一人見慣れない男が立っている。


私と年齢が寧ろ近い気がしなくもなく気がついたら無意識のうちに話しかけてしまっていた。


「あなたは……」


しかし何も答える事なく無言のまま顔を近づけてこようとしてくるのが分かった。


「!?!?!?え、ちょ………?」


なんとその男には顔がなかったのだ。思わず口をぽかんと開けてしまう。


これは一体何を訴えかけているのか、重要なメッセージなのか。


するといつの間にかその男は視界から消え去っていたのだった。


忘れきれずにどういう意味だったのかと考えながらゆっくりと重い瞼を開けてみる。


目の前には……見知らぬ制服姿の少年が立っていた。



私は今、初めて見る少年と見つめ合っている───



それを確信するとみるみるうちに恐怖で体が震えてきた。


「い、いやあああああああああああああああ!!!」


ベンチから立ち上がり彼が立っている方向から目を逸らすと自然と叫び声が出てきてしまった。


「こ、来ないでえ」


「はあ?なんで俺嫌われて…」


「あんたが今りいりにしていた行動を考えなさいよ!」


「いや、まじでわかんねえって」


「今のよ!レディーの寝顔をずっと見つめてるなんて…それも初対面のレディーに!いったいどういうことなんだよ!?」


言い終えてスッキリするとはあ、と深くため息をついた。


でもちょっと言いすぎたかも──


私はもう一度チラリと様子を伺うように視線を戻した。

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