空無調ホリズライツェ

九に照

全てはきっとここから始まって

第1話 夢へと誘われて



「はあ、やだなあ」


私は公園で一人ブランコに腰掛けながら、キャリーバッグの中の荷物を整えていた。


家出ではなく単に一人暮らしをすることになったのだが私には1つどうしても納得ができない不満があった──


「りいり集団生活すんの苦手なんだけど!」


それはアパートに住もうと思っていたにも関わらず寮で暮らすことになってしまったことからだった。


その地域に身寄りがある者の家に住まわせて貰う以外に考えるとそう妥協するしかなく、実質、いや実際に一人暮らしではないかもしれなくてとてもショックだったが致仕方ない。


ちなみにその寮ではご飯は一緒に食卓を囲み食べるしお風呂も共有らしい。


「文句言うならやっぱり着いてからだよねぇ…地図はっと」


キャリーバッグをごそごそと探し漁ってみる───だが最悪の事態に気付いてしまった。


「あれ?あれれ?」


混乱する気持ちを抑えながら改めて今まで見たところをもう一度探してみるも地図は無かった。


「えぇ…嘘ぉ、りいりどうなっちゃうのよーーっ!」


公園中に木霊したこの声はきっと近所中に響き渡ったはずだ─


「どうしたら良いんだろ……りいりにできること、って…」


思考を巡らせているとちょうど公園の中にあった公衆電話になんとなく駆け寄った。


中に入り受話器を手に取るもまず電話番号すら覚えていなかったのでこの案はボツにする事にした。


私は深くため息をつくとまたなとか行動しようと思い至りながら気力がなくなってきている私自身に気付いた。


「何も思いつかないや」


近くにあったベンチまで駆け寄ると瞼が自然と重くなる。どうやら体が一旦の休息を求めているみたいだった。


空はまだ青く澄みきった空が広がっている、ちょっとばかり昼寝をしてもいいだろう。


何か重要なことを忘れているような気がしたがまあ……


「考えなくていいや」


すると自然と耐えきれなくなっていき視界は暗闇の中へと落ちていった──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る