第8話 家出
生まれてはじめて家出をしたのは、中学1年を終えようとしている頃だった。私は、同級生(いや学校で顔を合わす児童のほとんどの)いじめ・いやがらせ・暴言に耐えかねて、東京から広島へ逃げようと考えた。そして音楽の授業が終わった後で、そのまま1人だけ学校を抜け出して逃げた。
東京駅へ行ってチケットを買って新幹線に乗って広島駅に着いた。そこから呉線に乗って夕方から夜がやってくる頃、JR呉駅で歩道された。
私を補導した警察官の横には、父方の祖母が付いていた。
交番に連れていかれて、警察官があれこれ聞いてきたが私はずっと黙っていた。警察官は、別に怒鳴るとか怖いという感覚はなかったが、ひとしきりお説教をした。どうして親のきもちが考えられないのか、親がどれだけ心配したと思っているのか、という話だ。警察官の背後に窓があって、真っ暗な夜の呉の街が拡がっていた。
あの頃、いまから35年前の日本では、学校の授業中に抜け出して家出するような児童は児童に全面的に問題があることになっていたのだ。
それに35年前の日本には、アスペルガー症候群とか広汎性発達障害という病名は存在していなかった。
学校のいじめ?
そんなのは完全に自己責任でしょう、親のしつけが悪い、甘やかし放題だからそうなるんです。
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