第4話

実際のところ、この30年間、何度かセシリアのことを題材に小説を書こうと試みたのだ。そのたびに自分には小説家になる才能がないという現実に打ちのめされることになった。それにネットで小説を書くよりは、ブログを書くほうが、読者を獲得するのが楽だった。

大して面白いことも書いていないのに、ブログは本当に読者を得るのが簡単だった。だから必死になって書いた。膨大な文字数を。だけどそんな生活を20年以上続けて、そのブログを書いた膨大な文字数は、ただの無駄だったと自分の中ではっきりした。ブログは、特に政治・思想系のカテゴリに登録すると、喧嘩好きなブロガーに巻き込まれてすぐに炎上したりトラブルになった。あるいは私の文章の書き方や文章そのものに、トラブルを誘発するようななにかがあったのかもしれない。

今になって思うと、なぜ才能がなくてもいいから、20代から必死で小説を書かなかったのだろうと思う。才能の有無の問題ではなく、自分自身への怠慢の問題だった。なぜ今の私がそう考えるのか、理由も論理的に説明できるかどうかわからないけど、過去20年間、ブログライティングに投入した時間も、文字数も、自分にとって無駄だった。

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