61.牢獄をこえて

『お姉ちゃんたち、大丈夫?! 』

 ディメンション・フルムーンからの通信だ。

 通信は問題なくつながるみたい。

 みつきにとりついていた、小型の巨人たちが、引き剥がされて投げつけられていた。

「今のところはね」

 安菜が勝手に言った。

「そんなに無事じゃないよ!

 聞いてよ。この痛々しい駆動音! 」

 水が押しのけられた川底を、走る。

 もう一度、後ろを取ろう。

『聞こえてるよ!

 なんとか、そっちへ行くから! 』 

 たのもしい言葉だね。

 あの子が、そんなことを言えるようになったなんて。


 巨人の腰から上が、180度クルリと回った。

 後ろを取るのは、もう無理かも。

 

 そう思ったら、巨人の体からまた打撃音。

 大きく揺らいだ。

『こん棒エンジェルスにつぐ!

 逃げないと撃つ! 』

 これは、外から空気を震わせ聞こえる声。

『もうすぐ、君たちの世界への道が確保できる!

 帰るなら、もう手はださないよ! 』

 しのぶの声と、ブロッサム・ニンジャの砲撃だよ。


 そうだ。キャプチャーのそとは、キャプチャーその物にじゃまされて見えにくい。

 けど、そとのカメラにつながれば・・・・・・安菜!

「やってみるよ。

 つながった! 」


 ドローンからの映像だ。

 雨はまだ、やまない。

 ブロッサムは、こっちへ両手を伸ばした砲撃体制でいる。

 となりには、バスを抱えたままのパーフェクト朱墨。

 周りはホクシン・フォクシスのキツネ型ロボ、北辰たちが守ってる。


 巨人は、襲ってくる敵を見回しながら止まっていた。

 そうだ!

 私は飛び上がり、こん棒をつかんだ。

 これが最後のジャンプかもしれないと思いながら。

 こん棒をキャプチャーの中に引きずりこむ!

 相手が気づいたときには、もう遅かった。

 こん棒は手ごと飲み込まれて、もう使えない!

 巨人の背中に火花がちった。

 誰かが、ミサイルをうってくれたんだ。


 そこでできたスキに、また後ろを取れた。

 今度のタックルは、もっと低く。

 膝の後ろをとらえて、ひざを押し曲げる。

 どんな力が強い相手も、足元が不安定なら発揮できない!

 キャプチャーに抵抗する、強力なのでも!


「しのぶちゃん!

 朱墨ちゃんが抱えたバスは、どんな具合なの? 」

 安菜が通信を始めた。

 何か気づいたの?!

『えーと。車体のそこが攻撃で曲がった道路に乗り上げて、曲がったらしいです。

 運転できないそうです! 』

「じゃあ、あなたがそこの方から、押し上げてみて。

 そっとだよ」

 ブロッサムが砲撃体制を解いて、安菜の言うとおり、バスのそこを持ち上げた。

 バスの見た目は、変わらなかった。

 でも、そのタイヤは勢いよく回転しはじめた!

 地面に下ろされると、走りだす。

 なに?!

 あんな方法で直るものなの?!

「はーちゃんが言ってた、MCO自身の意思、ってやつだよ」

 安菜自身も、おどろいていた。 

「それがあるなら、少しのきっかけさえあれば、助けてくれるんじゃないかと思って」

 あんた、天才だ!

「私もそう思います! 」

 はーちゃんも?!

 うれしい!

「そう思うなら、天才の発想ついで。

 キャプチャーの表面には、映像が写し出せたよね」

 エニシング・キュア・キャプチャーの不思議な性質、その3だね。

 モニターに写ってるのを、そのままに。

 キャプチャー表面が曲がっていても、調整可能だよ。

「よし。

 上のヤツを、説得してみよう」

 恐怖はある。

 だけど、このまましがみつくだけよりは、建設的だね。

「脱出できる、ギリギリのエネルギー。

 そこまで減るまでは、待つよ」

 はーちゃんは。

「およそ、6分後です」

 安菜は「わかった」と言うと、ヘルメットとマスクをはずした。

 そして、息をととのえてる。

 前のめりになった機体の中、やりにくいこともあるだろうな。

 金色の長い髪は、後ろでまとめてるからたれる心配はない。

 その姿を、キャプチャーに写しだす。

 

「はじめまして。

 私は安菜・デ・トラムクール・トロワグロ」

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