58.奇跡が合わせた仲間と敵

「どうして、はーちゃんが?! 」

 えっ、安菜にもわからないの?

「再起動してない!

 ああっ。転がったときに手がついたけど、でもそれだけで複雑なパスワード入力できるわけないし」

 そしたら、はーちゃんが勝手に?

「起動したばかりなので、その点はわかりかねます。

 もしかしたら、MCO自身の意思なのかもしれません」

 ・・・・・・それはあるかも。

 MCOは、Mechanical Civilization Oath(メカニカル・シビリゼイション・オウス)。

 "物質文明から生まれた誓い"

 誓いって言うからには、そんなこともできるかもしれない。


 ドン! と、明らかに危険な音がした。

「そんなことより! 敵が! 」

 そうだよ!

 黒い炎が襲ってくる!

 しかも、これまでより大きい!

 回転する燃えさかる線となって打ち上がる!

「チャフ散布!」

 安菜がまた、オレンジの光たちと煙で私たちを包んだ。

 それに紛れるひまはない!

 急いで逃げた。

 燃える線が、チャフを切り裂いて飛びさる。

 それだけで、機体がドン! と押し退けられた!

 音速を越える速さから生まれた空気のハンマー、衝撃波?

 あまりの熱で気流が乱された?

 とにかく、振り向いたら見えたの。

 円形に押し退けられた雨とチャフが。

 あれか!

 黒い巨人が、こん棒にしたもの。

 それは、私からうばった火器コンテナだった。

 つかんだ手から、炎がコンテナ全体に広がっていく。

 待てよ、あのコンテナの向き・・・・・・。

「はーちゃん、私の120ミリ砲がまっすぐあいつを向いたら、教えて」

「承知しました」

 こん棒エンジェルスは、コンテナを勢いつけて、後ろに大きくふった。

 一瞬あとには、ふり戻されたコンテナから魔法日が振り抜かれてこっちに来る!

「今です!」

「信じた!」  

 私はそう言って、トリガーを引く!

 コンテナから2つの砲火が飛んだ。

 今度は、レーザーもつける!

 レーザーは高温の光の槍。

 雨が最悪のジャマ者になる。

 雨を蒸発させると湯気になる。

 その湯気がレーザーをバラバラにしてしまうから。

 今まで使う気がなかったけど、あの距離なら!


 こん棒エンジェルスの半身が、炎に包まれた。

 コンテナが落ちる。

 恐ろしい悲鳴が、辺りをゆらした。

「スゴいや。

 こんなこともあろうかと、ってやつ?」

 安菜がかいかぶってきた。

「ただのWi-Fi」

 電波で作る予備の回線だよ。

 敵巨人が痛々しくよろめいた。

 それでも、丸窓のような目で私たちを見据える。

 黒い炎と一体化した牙を開いて、吠える。

 でも、なんでだろう?

 敵の動きを見て、というより、やっと今気づいた、って感じがする。

 

「もう一回キックする?」 

「いいえ、その前にすることがある!

 メガ・エニシング・キュア・キャプチャーを使う」

「OK!」

 後ろの席で、ポケットからペンダントをとりだす音がする。

 昴先輩からもらった、魔法炎。

 安菜の前にあるモニター裏には、隠された専用コンセントがある。

 そこにペンダントを入れる。

 本当は、異能力者をのせた時に、能力をいれてもらう装置なんだ。

 ウイークエンダーたちは、鉄のかたまりにペンキを塗った、ただのロボットじゃない!

 長官からもらった、生体部品の結晶なんだから!

 胸の動力源、無限炉心からのエネルギーがわき上がる。

 そのエネルギーは、私の意思にしたがって、物理法則を書きかえてくれる。

 重量を変えるとか、素材の強度を高めるとか。

 今日は、そんなケチなものじゃない!

 わき上がったエネルギーは、コックピットで魔法炎と混じり会う。

 そして、頭部に導かれる。

 ひたいにつけられた、砲口。

 ブロッサムの胸ほどの大きさじゃないけど、作りは同じもの。

 そこに、黒い光が宿る。

 

 この光景を見ても、敵巨人はひるまなかった。

 足を踏みしめ、腕に力をこめて、胸を張った。

 真正面から受けるつもりだ。


 そんな勝負に乗るつもりはなかった。

 私たちがするのは。

「音声コード入力!」

 声をそろえて。

「「メガ・エニシング・キュア・キャプチャー!! 」」

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