3

それからショウたち、やんちゃトリオは、廃ビルの中で、虫の死骸や、壊れた機械などを見つけては、ワァワァと騒いでいた。

そうして、廃ビルの中を1階から3階まで見て回ると、階段を降り、入口の近くまで戻って来た。

「結局、何も無かったし、幽霊も居なかったな。」

ショウが、ホッとしたような顔で言った。

「ああ、そうだな。」

「ぜんぜん、余裕だな。」

カズマとリュウキも、笑顔で言った。


「ショウくん、あのね。」

アヤが、ショウを見ながら言った。

「ん、なんだ?」

「実は、さっきから言おうか迷ってたんだけど。

このビルに入ってから、ずっと、みんなが付いて来てるの。」

アヤがそう言うと、ショウが立ち止まり、ジッとアヤを見て聞いた。

「みんな、って誰だよ。」

「ここに居る、みんなだよ。

ほら、わたしたちの後ろに居るでしょ。」

アヤは、そう言うと後ろを振り向いた。

やんちゃトリオも振り向き、アヤが見ている方を見た。


そこには、何も無いように見えた。

しかし、少し見ていると、白い煙のような物が見えて来た。

更にそれが、人の顔や、人の体の形になっていることに気付いた。

その白い人の顔や体の形をしたものが、アヤたちの後ろに数体居たのだ。

「うわぁーっ、出たぁ。」

「逃げろぉ。」

「うわぁーーーっ。」

3人はとても驚き、悲鳴を上げて一目散に走り出した。


ショウも、アヤの手を離すと、逃げ出していた。

「あっ、ショウくん待って。。。」

アヤがそう言ったが、3人は止まることなく、廃ビルから外へ逃げ出してしまった。


「あーあ、行ってしまいましたね。」

手提げ袋の中から、タヌ助が顔を出して言った。

「もう、ショウくんったら。

わたしを守るとか言っときながら、さっさと逃げるなんて。。。」

アヤは、怒っているような、悲しんでいるような、ちょっと複雑な顔をしていた。


「みなさん、お騒がせしました。

それと、ありがとうございました。

それじゃあ、帰ります。」

アヤは後ろを向くと、幽霊たちにそう言って、丁寧にお辞儀をした。

幽霊たちは、アヤに何か言っていたが、アヤには聞き取れなかった。

しかし、優しく手を振ってくれていることに気付くと、アヤも手を振り返した。


その幽霊たちは、アヤたちが、迷子になったり、ケガをしたりしないか、心配して付いて来てくれていたのだ。

アヤとタヌ助は、それに気付いていたが、何も言わなかった。

「やっぱり、みんなに言わない方が、良かったかな?」

廃ビルから外へ出ると、アヤがタヌ助を見ながら言った。

「まあ、良いんじゃないですか。

これに懲りて、あの3人も、危険な所へは近づかなくなると思いますから。」

少し笑いながら、タヌ助が言った。

「うん、それもそうだね。」

アヤも笑顔で言うと、元気よく家へ帰った。


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