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その建物は、アヤたちがいる所から、ほんの100mほど離れた場所にある、古い廃ビルだった。

廃墟になって20年近くになるが、キチンと管理していないらしく、荒れ果てていた。

入口のドアも壊され、簡単に出入りできるようになっていた。


やんちゃトリオは、行く気満々で、はしゃぎ始めた。

アヤがその3人から離れて帰ろうとした時、ショウがアヤを見ながら言った。

「なあ、アヤも一緒に行こうぜ。」

「えっ、わたしは良いよ。」

「どうして?」

ショウが不満そうな顔で、アヤを見ながら聞いた。

「怖いんだろ。」

カズマが意地悪そうな顔で言うと、リュウキも揶揄った。


「怖くは無いけどね。。。

そんな所、行かない方が良いよ。」

アヤがそう言うと、

「なあ、良いだろ、一緒に行こうぜ。

何かあったら、俺が守ってやるから。」

ショウは強くアヤの手を握ると、アヤを見ながら言った。

「うっ、うん。。。」

ここで断るのも可哀相かなと思い、アヤが頷くと、ショウがとても嬉しそうな顔をした。


(幽霊なんて、わざわざ見に行かなくても、毎日見てるよ。。。)

そう思いながら、アヤはチラリと手提げ袋の中のタヌ助を見た。


4人は、廃ビルの前まで来た。

廃墟となり年月が経っているため、外側のいたみもひどく、少し不気味な感じになっていた。

「よし、入ってみようぜ。」

ショウは、ギュっとアヤの手を握り、少し緊張したような顔で言った。

そしてゆっくりと廃ビルの中へ、入って行った。


廃ビルの中に、明かりは何も点いていなかった。

しかし、窓やドアが壊されており、外からの光が射し、薄暗いながらも中を見る事ができた。


アヤは廃ビルに入ると直ぐに、

「あっ。」

と声を出した。

「うん、どうかしたか?」

それに気付き、ショウがアヤを見ながら聞いた。

「うん、さっきね、そこに・・・」

アヤがそう言うと、前を歩いていたカズマが、部屋の入口で声を上げて言った。

「あそこに何かあるぞ。」

「ホントだ、何だろう?」

リュウキもそう言うと、2人はその部屋に入って行った。

ショウとアヤもそれに続いた。


カズマとリュウキが見つけた物は、マンガの本だった。

「何だよ、マンガじゃないか。」

ショウが、少しホッとしたような顔で、言った。

その本は、もう何年もそこに放置されているらしく、表紙が破れたりしていた。

カズマは、マンガの本を持つと、パラパラと捲ってみた。

「全然知らない、マンガだ。」

そう言うと、ポンと放り投げた。

「次、行こうぜ。」

ショウがそう言うと、カズマとリュウキは部屋から出て行った。

アヤも、ショウと一緒に部屋を出ようとして、マンガの本をチラリと見ると、風も無いのに、本がパラパラと捲れていた。


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