第3話
「花…び?」
コイツは、何を言っているんだ?
「だからさあ、終わりにしてあげようって、言ってるのさぁ」
なんだ、あれは?
「これさぁ、自作の時限発火装置なのさぁ。ぶふふふ、予め、セットされた時間が来ると火花が出る構造さぁ。ぶふふふ、糞お兄ちゃんが花火になる時間でもあるのさぁ」
「?!」
く、狂っている。
コイツは駄目なヤツだ。
逃げないと殺される。
俺は、こんなところで死にたくない!
妹は俺が守るんだ。
俺は必死に縛られている腕を動かし、何とか抜け出そうとするが、どうしてもロープを外す事が出来ない。
「ぶふふふ、暴れでも無駄なんだな。そのロープは簡単には外れないんだな。それじゃ、これでサヨナラだな」
また、真っ暗になる。
カッチ、カッチ、カッチ、カッチ、カッチ
シューッ、シューッ、シューッ、シューッ
聞こえるのは、奴が作った簡易発火装置のタイマー音と、ガスの吹き出す音だけだ。
ああ、俺もこれで終わりか。
どうやら、
『駄目、
「
幻聴か?
久しぶりに
『幻聴じゃない。本当に私が喋っているの』
「そうか。は、初めてだな。会話出来てるなんて。けど、俺はもう終わりみたいなんだ」
『…大丈夫、私の指示に従って!』
「どう、するんだ?」
『左に転がるの。そこにガスの吹き出し口がある。なんとか手元を向けて、コックを
「そんな、器用な事、出来ないよ…」
『出来る。私が見守ってきた
「判った。やってみる」
其処まで期待されたら、やるしかないじゃないか。
俺は彼女の言う通り、左方向に転がった。
『そこで立ち上がると、換気扇のスイッチがある。それを押して!』
「俺、縛られてるんです、が」
『貴方なら出来る』
「過度な期待は、迷惑なんだが、なっと!」
俺は壁に身体を押し付けながら、そのまま立ち上がる。
カチャッ「!」
すると丁度、頭に触れる形で換気扇のスイッチが入った。
ブオオオーンッ
『上手くいった。今度は、そこから右方向に転がるの』
「だから、縛られてるん、だって」
俺はまた寝転んで、言われた通り右方向に転がった。
すると冷たい何か、金属の表面に触れた。
ガスボンベだ!
倒れているから、溶接用のタイプだろう。
俺はどうにかボンベに背中を付け、動く手首から先の手の平を使い、ボンベのハンドルを探る。
!あった。
俺は、先端部のボンベのハンドル部分の発見に成功した。
慎重にまさぐって、ボンベのハンドルを閉めていく。
きゅッ
シューッ、シュー、シュー、…………
やったぞ!
俺は遂に、ガスを止める事に成功した。
『お疲れさま。ガスは止まったわ。今の濃度なら爆発の恐れはないわ』
「はああ、た、助かったぁ」
ふぅ、息が切れる。
一息ついた俺は、そのまま寝転んだ。
「はぁはぁはぁ……出口は」
『施錠されてる。出られないわ』
「そうか…」
『ごめん、私がもっと早く危険を伝えられたら良かったのに』
「いや、俺の不注意だ。君のせいじゃない」
『
「なあ、君は
『……………』
「答えてくれないのか…」
『…わからない。自分が何者かも、私、わからないの』
「わからない?」
『ずっと、白い霧の中にいるの。出口を探してるんだけど、わからない』
「俺の事は?」
『…
「それは、いつから?」
『
「え、ええっ?!」
『ウフフフ、ビックリした?』
「まさか、ずっと俺の中に?」
『そうだよ。小学校の時にテストの点数、0点を隠した時くらいからかな』
「ちょっと待て。それって何か?お前、俺が小学校三年くらいの時から、俺と一緒だったって事!?」
『そうだよ。ずっと一緒だよ』
おい、なんだよ、それ。
俺のプライバシーは何処に行った?
俺は思わず、頭を抱えた…は、今は縛られてるから出来ないので、そんな気持ちだって事!
「まさか、俺の」
『ん、ベッド下の裸のお姉さんの写』
「わああーーーーーーっ、ストップ!」
『ウフフフ、私、
「いや、判らんでいい。はあっはあっはあ」なんてこった。
俺はもう、お
「じゃあ何で今まで、声を掛けてこなかったんだ?」
『何度も、ずっと声を掛けていたよ。
「俺が声に気付かなかった?」
『そう、私の声が届くようになったのは……』
「三年前からか」
『そうだね。そのくらい……』
それはやはり【
ジィィーッ、カチンッ
「うお?!なんだ?」
『時限発火装置が作動したの。もう、大丈夫よ』
「はあ、脅かすな。ここでだいぶ寿命が縮んだよ」
『ウフフフ、爆発しなかったんだから、寿命が伸びたんじゃないの』
「……有り難う」
『突然、どうしたの?』
「また、助けられた」
『助言しただけ。助かったのは、貴方の行動によるものよ』
「君に言われなければ、諦めていた」
『……
「君のお陰だ。だから、改めて言わせてくれ。ずっと見守ってくれて、ありがとう」
『……っ』
「
『……もし、
「俺の大切な人は、君だよ」
『!……いいの?私で…』
「君がいいんだ。君じゃなきゃだめだ」
『…うれしい…初めて……だね。こんな会話をするの…。あのね、
「思っていた事?」
『私が貴方の中に入った理由って、何だろうって……』
「入った理由…」
『今さら、何を言ってるんだろうって、そう思うかも知れないけど、私もいろいろ考えていたの。貴方と会話出来るようになる、そのずっと前から』
「…………」
『でも、貴方に声が届くようになった、あの時から、何となくその理由が解ったような気がしたの。そして今日、貴方と会話出来て確信したわ』
「何が分かった?俺の守り神としての役目?」
『ふふ、貴方、結構ドジ体質だものね。私が居ないと、こうやって直ぐに危険に逢うから』
「ほっとけ!」
『あははは、でも、そのお陰で貴方と話せるようになったかも知れないから、良かったかな。あのね、
「え、今、なんて」
『…さあね。聴こえてなかったなら、別…』
「好きって。好きって言ってくれた!」
『!!』
「…俺の事、好きって」
『恥ずかしいから何度も言わないで!分かったから。ちゃんと聴こえていたって、分かったから!』
「
『………
ギィッ、バタンッ
「!?」
『ゆうと!!』
ドカッ「ぐは!?」
なんだ!?
いきなり、頭に激しい痛みが!
急にドアが開く音と、眩しい外の光で、何も見えない!
「しぶとい、しぶとい、しぶとい、ゴキブリ並みにしぶとい、この糞兄ちゃんがぁ!」
「
しまった。
俺はまだ、縛られたままで反撃出来ない!
「花火を上げるはずだったのに、ことごとく邪魔しくさって、この糞ガキがぁ。もう、許さない。直接、ぼくが、こ、殺してやるよ」
チャキッ
奴の手が光る。
ナイフだ!
ああ、これで終わりか…。
ごめん、
もう、守ってやれない。
そして
君を愛してる、愛してるよ、
『
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