第12話 宝物の在り処②


 泣き疲れたエスリンの枕元に、イモリのサラマンがやってきた。


 そしてエスリンの注意を引いた後、「付いてこい」と言わんばかりにどこかへ歩いていった。


「サラマン……?」


 エスリンはサラマンに招かれるように、その後を追う。

 たどり着いたのは、キアンが居た給仕係の部屋だ。


「これって」


 そこに綺麗に並べてあったのは、エスリンが書いた12冊の魔法書と、魔法窯。

 バロールに粉々にされたはずのそれは、綺麗に復元されていた。


「どうして……!!」


 エスリンは、もう失ったと思った魔法書を手に取り、ページを開く。

 そこにはエスリンが懸命に書き留めた文字が一つ残らず元通りになっていたのだ。


(凄い……!!全部元通りだっ!!)


 エスリンは嬉しさに踊るような心地がした。


「もしかして……」


 エスリンは、思い出した。

 キアンが紙切れになった魔法書を、一緒に拾い集めてくれたことを。


「キアンが治してくれたの?」


 エスリンが、サラマンに問いかける。

 しゃべることはないサラマンだが、得意げにその長い舌をチロリと動かした。


 実は、サラマンは目撃していた。

 キアンがエスリンに隠れて、こっそり彼の魔法で魔法書と魔法窯を治していたことを。


「こんなことできるって知られたら、ダーナ族だって疑われるな」


 キアンはそう気をもんで、修復したものを隠していた。

 いつか彼の任務が終わったら、エスリンに渡すつもりで。


 サラマンはしゃべることはできない。

 それでもエスリンに、キアンが守ったこの宝物の場所を伝えてあげたかったのだ。


「サラマン、ありがとう」


 エスリンは魔法書を大切に抱きしめた。


「……私、キアンに会いたい」


 エスリンは、目を閉じてつぶやいた。



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