短編:海辺で

Take_Mikuru

海辺で

〇海辺・外・昼


相田拓馬(26)が海に面した道に一人、海の方に体を向けながら手すりに掴まって立っている。拓馬は寂しそうな様子で宙を見つめている。向こうの方から足音が近づいてくるのが聞こえる。少しすると、足音が近くまで来て突然止まる。


りんか「あれ、相田先生?」


拓馬は何かに気づいた様子でりんか(19)の方を見る。りんかはぴっしりした白いT-シャツにデニムショートパンツを履いている。りんかと拓馬の目が合う。


りんか「あ!やっぱりそうだ!」


りんかは拓馬に駆け寄る。


りんか「先生お久しぶりです!竹原りんかです!2年前に予備校でお世話になりました」


拓馬はりんかを見つめながら言葉を失っている。


りんか「・・・あ、覚えてないですよね、、、2年前のことですし、生徒さんも沢山いらっしゃいますもんね、邪魔してすみません」


りんかは会釈し、そのまま後ろを振り向こうとする。


拓馬「りんかちゃん」


りんかは拓馬の方を振り向く。


拓馬「ごめん、覚えてるよ。もちろん、覚えてるよ。あまりに嬉しくて、言葉が出てこなくて」


りんか「っあ~、そうだったんですね!もう、結構寂しかったですよさっきの反応!」


拓馬「ごめんね、まさかこんなところで会うとは」


りんか「ほんとですね!私はサークルの合宿で来てて、ちょっと一人で散策しよっかなって思って歩いてました」


拓馬「あ、サークルの合宿ね!何のサークル~??」


りんか「テニサーです」


拓馬「あ、テニサーね!」


りんかが笑う。


りんか「そういうイメージないですかぁ~??」


拓馬「いや、まぁ、逆に結構いそうだなぁ~って思って」


りんか「そっちですかぁ~」


拓馬がちょっと笑う。 

 

拓馬「うんうん、でも別行動なんて珍しいね、合宿で」


りんか「昨日結構激しく飲んで、皆二日酔いで潰れてるんですよね~」


拓馬「ああ、なるほどね」


しばし沈黙が流れる。


りんか「・・・先生はここで何やってるんですか?」


拓馬「あ~」


拓馬は海の方を見る。


拓馬「う~ん、まぁ~」


りんか「あ、言いにくいことだったら別に大丈夫ですよ?」


拓馬「あ、いや」


拓馬は視線をりんかに戻し、手すりを離して、すっと上体を起こし、体をりんかの方に向ける。


拓馬「あの、実は、りんかちゃんのこと、考えてました」


りんか「、、、え?何でですか?」


拓馬は大きく息を吐き出す。


拓馬「・・・僕は君が好きだったんだ。予備校時代からずーっと。だからりんかちゃんが予備校を卒業するタイミングで何も言えなかったことをずっと後悔しててね。さっきまでずっとそのことを考えてたんだよ」


りんか「、、、そうなんですね」


拓馬「うん、だからさっき声を掛けられた時、あまりにビックリして声が出なかったんだ」


拓馬は笑う。


拓馬「こんなところで再会できるなんて思わなかったよ~。そして本当に、相変わらず、エロカワイイね、りんかちゃん、本っ当に最高の女の子だよ」


りんか「、、、あの、今何が起こってるんですか?」


拓馬「、、、思いを伝えてるんだよ。2年前言えなかったことを、今」


りんか「今、エロカワイイって言いましたよね?」


拓馬「うん!」


りんか「褒めてるつもりですか?」


拓馬「うん!最っ高の女の条件だよ。エロカワイイっていうのは。りんかちゃんのためにある言葉だと思ってるよ」


りんか「・・・くそキモイです。全く嬉しくないです。エロカワイイって、つまりヤれるってことですよね?」


拓馬「もちろん。ヤりたくて仕方がないよ、君とは。予備校時代からずっとそうだった。個別面談の時なんて、机の下でおちんおちん立ち上がってましたぁ~」


りんか「今やってること、ハラスメントだと思いますよ?」


拓馬「もうそんなもん関係ないんだよ!僕はもう予備校講師じゃない!君はもう生徒じゃない!もう私達は、男と、女なんだ!」


拓馬はりんかに数歩近づく。りんかは少し後ずさる。


りんか「嫌です。こんなことのために先生に話しかけたんじゃないんです。あの頃のお礼だけ言って、引き続きこの辺を散策したかっただけなんです」


拓馬「え、そうなの?君も僕に思いを寄せてたとか、そういうのじゃないの?」


りんか「違います。私彼氏いるんで」


拓馬はしばらくりんかを凝視する。りんかはこの上なく居心地が悪そうな様子で、今2人が立っている道の横にある道路に飛び出し、拓馬の隣を通ってそのまま直進する。りんかは物凄いスピードで歩いていき、拓馬からある程度離れたところで道路から元の道に戻り、そのまま直進する。拓馬はその場で固まっている。

 

拓馬「えええええええ!!!!!!????」


向こうの方から数人が走って来る音が聞こえる。


男1「っあ~、りんかマジでどこ行ったんだよあいつ~」


男2「もうとりあえずこの辺一帯探そ、な?」


男1「あ、すみません!」


男1と男2が大分ショックを受けた様子の拓馬の前で止まる。


男1「あの、この女の子、見ませんでしたか?」


男1がスマホを取り出し、画面を拓馬の目の前に出す。画面には、半袖のテニスウェアにスコート姿でラケットを持っているりんかが映っている。


拓馬「、、、りんかちゃん、、、」


男1「え?りんかのこと知ってるんですか?どこにいるか分かりますか?」


拓馬「さっきまで一緒にいた、、、」


男2「あ?じゃあどこにいんだよ!」


拓馬「お前らには教えん」


男2は思いっきり拓馬を睨みながら近寄り、拓馬の胸倉をつかむ。


男2「あ?ふざけんなよ。りんかは俺らの大事なペットなんだよ!」


拓馬は男2を見る。


拓馬「ペット?」


男2「ああ、ヤリたい時にいつでもヤれるペットなんだよぉ!!!今ヤリたくて仕方ねぇんだよ!!!早く居場所教えろよ!!!」


拓馬「お前ら、りんかとヤったんのか?」


男2「だからそうだっていってんだろ!!」


拓馬「りんかは楽しんでるのか?」


拓馬も興奮した様子で男2の胸倉を思いっきり掴む。


拓馬「りんかは気持ちよさそうなのかぁ!?」


男1がふと笑う。


男1「さぁ、気持ちいいんじゃね?アナルがんがんに突かれて。昨日なんて一晩中なぁ?」


男2もふと笑う。


男2「ああ、早く続きしてーからよぉ~、早く居場所吐いてくんねーかなーおっさん!」


拓馬は思いっきり男2を突き飛ばす。男2は少し驚いた様子で後ずさる。拓馬はこの上なく真剣な表情で男1と男2を見ている。


拓馬「まず第一に、私はおっさんではない。まだ26ちゃいだ。おっさんからしたら赤ちゃんみたいなもんだ。第二に、私はとんだ勘違いをしていたようだ。りんかはテニサーになど入っていない。彼女はヤリサーに入り込んでしまったようだ。そして私は、そんな彼女に自分の感情を一方的に押し付けるのに必死で、彼女のSOSを完全に見逃してしまったようだ。彼女は逃げてたんだ。テメェらのゴミクズサークルから。そりゃそうだ、合宿中に一人行動なんてやっぱりありえない。そこで元予備校講師の私を見つけ、助けてくれるかもしれないと、声を掛けてきたんだ。自分の未熟さが恨めしいよ」


拓馬は深く深呼吸をし、カンフーマスターのようなポーズを取る。


拓馬「ここから先は通さんぞ」


男2「つまりりんかはこの先に行ったんだな」


男2と男1はお互いを見て頷き合う。すると、男2が一気に拓馬に突進し、男1はその隙にりんかが歩いて行った方の道を物凄いスピードで走っていく。


拓馬「うあ!」


拓馬は男2を全力で止めながら走り去っていく男1を見る。


男2「よそ見厳禁!」


男2は思いっきり拓馬を殴り、拓馬は地面に叩きつけられる。拓馬は男2の膝を思いっきり蹴る。男2は唸りながら前かがみになる。


拓馬「覗き見厳禁!」


拓馬は男2の顔面を思いっきり蹴る。男2は唸りながら地面に倒れる。拓馬も男2も顔にアザが出来ており、激しく呼吸している。拓馬は立ち上がり、男2の顔を何度も何度も踏みつける。男2の顔がみるみる赤く、血まみれになっていく。少しして、男2が完全に気を失わったタイミングで拓馬は踏みつけるのをやめる。拓馬は激しく呼吸しながら男2を見下ろしている。男2の鼻は完全につぶれ、血まみれになっている。拓馬は額の汗を拭い、男1が走っていった方向に走り出す。


◯同・外・昼


拓馬は全力で走っている。少し距離のあるところに砂浜が見える。拓馬は砂浜の方を見る。砂浜に2人の人が見える。片方の人が仰向けに倒れており、もう片方の人がその上に仰向けになって腰を振っているのが見える。


拓馬「ぅあああああああ!!!!!!」


拓馬はさらに走るスピードを上げる。


◯砂浜・外・昼


男1が仰向けになっているりんかの上に仰向けになり、アナルを犯している。りんかはこの上なく苦しそうに唸っている。男1はこの上なく猟奇的に笑っている。


男1「っあ〜、気持ちいいなりんか、あん?気持ちいいんだろ?、あんあん言ってない時の方が感じてんだもんなぁ〜?」


男1はさらに激しく突き始める。りんかは大粒の涙を流しながら、この上なく絶望感に満ち溢れた顔をして唸っている。後ろからもの凄い足音が聞こえる。男1は夢中で腰を振っており、全く気づいていない。一気に拓馬が姿を現し、後ろから男1のケツを思いっきり蹴る。男1は女々しい叫び声と共にりんかの前に倒れ込む。その際、ボキっと骨が折れる音がする。


男1「うあああああ!!!!!」


男1はこの上なく苦しそうな様子でもがき苦しんでいる。拓馬はそのまま男1の髪を掴み、近くにある大きく尖った岩に何度も何度も頭をぶつける。拓馬はぶつける度に、怒りに満ち溢れた唸り声をあげている。男1の顔はみるみる血に染まり、次第に男1はぴくりとも動かなくなる。拓馬はそれでも男1を岩にぶつけ続ける。


拓馬「うああああああ!!!!!!!死ねぇぇ!!!!!!!!!」


拓馬は叫びながら男1の顔を砂浜に投げ捨てる。男1の顔は血まみれなり、もはや誰か分からなくなっている。男1のペニスは直角に曲がっている。拓馬は激しく呼吸しながら男1を見下ろし、後ろを振り返ってりんかを見る。りんかは過呼吸になりながら激しく泣いている。拓馬はりんかに駆け寄る。


拓馬「竹原、すまない、君のSOSに気付けなくて、本当にすまない」


りんかは一瞬泣くのをやめて拓馬を見上げるが、数秒後、再び激しく泣き始める。泣きながら、りんかは徐々に顔を下げていき、最終的には砂浜に顔を埋める。拓馬は横でりんかを見守りながら涙を流している。しばらくこの状況が続いた後、拓馬はスマホを取り出し、数回タップしてから耳に当てる。


拓馬「もしもし、レイプ現場をみました、犯人は取り押さえました。被害者が危険な状態です、はい、はい、場所は・・・」


◯同・外・昼


パトカーが一台止まっており、りんかがタオルにくるまって助席に座っている。拓馬はパトカーの前で警察と話している。ちょうど話が終わり、拓馬は警察1に頷き、りんかを見る。拓馬は数秒間りんかを見つめた後、数回笑顔で頷き、砂浜の出口の方に歩いていく。


◯民宿・外・夕方


拓馬が鞄を肩から下げ、民宿の前で立ち止まる。拓馬は民宿を見上げる。そうしていると、民宿から男が1人でてくる。


男1「誰だテメェ」


拓馬は鞄を下ろし、中から斧を取り出す。


拓馬「りんかの仇を討ちに来た」


男1は笑う。


男1「はぁ?」


拓馬「これからお前ら一人一人ヤってやるっつってんだよ」


民宿から一気に10人出てくる。10人はそれぞれ鋭利な刃物を持っている。男1もケツポケットからマチューテを取り出し、10人を見渡してから拓馬に視線を戻して鼻で笑う。


男1「おう、ヤれるもんならやってみろよ」


男1は10人を見渡す。


男1「オメエらこれから乱交すっぞぉ!!!!」


男10人「うえええええええいいいいい!!!!!」


拓馬と男たちが激しく睨み合う。しばし沈黙が続き、拓馬が数回深く深呼吸をする。遂に拓馬が物凄い叫び声を上げる。


拓馬「ううううううおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」


男たち「あああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


拓馬と男たちが武器を真上に上げながら全速力でお互いに向かっていく。

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