第2話
「ん、んん……あ、れ? ここ……わたし、じさつしようと……」
「あら、目が覚めましたの?」
「……? ……! …………っ!?!?」
(え、あ、わ、わたし……裸!? そ、そうだ、わたし……昨日、この人と出会って……っ!? え、えぇ!? わ、わたし……え? え? 女の人と?)
「ふふっ、顔を真っ赤にして可愛らしいですわね。昨晩はワタクシにキスを何度もねだって、赤んぼうみたいでしたし」
「う、うう、なんでぇ……?」
(ぼんやりとだけど覚えてる。わたし、初めてキスしたし……き、気持ち、よかったの、覚えてる……。で、でも、これって……変なことじゃ?)
「人間にとっても、同性による性行為は普通ではありませんの?
それとも、男性との経験をしてみたかったんですの?」
「ちっ、ちがいます! でも、なんであんなこと……?」
(初めてへんな声をあげた! わたし、あんな声……わ、忘れよう!)
「あらあら、心の中は混乱していますわね。でも、貴女の猫のように鳴いた声は心地よかったですわ♥ それに、乱れ――「わーわー! や、やめてください!」――あら、恥ずかしがっているなんて、可愛らしいですわね。
それじゃあ、今夜の楽しみに取っておきますわ」
「~~~~っ!!」
「それで、ここはいったい、何処……ですか?」
「そうでしたわね。昨日、ワタクシは貴女を住処へとお持ち帰りしましたの。
ああ、想像している魔界とかではありませんわよ。
ここはあのマンション近くにある屋敷ですわ」
「マンション近くの屋敷……? ……あ、幽霊屋敷!」
「な、なんですの? その不名誉な名称は……」
「え、えっと、手入れが行き届いた広い庭なのに、庭を手入れしている人を見かけないとか、近所の子供が忍び込んで帰ってこなかったのに……、1日したら何もなかったみたいに帰ってきてたとか……。
誰も居ないはずなのに、屋敷内に誰かが歩いているのを見たとか……です」
(他にもいろいろ噂話があった気がするけど……、ちゃんと聞いたのは昔のことだからあまり覚えていないや……)
「……はあ~、そんなことになっていましたのね。
実際には庭の手入れはワタクシが契約している使い魔たちにやらせていたからですけど、人間が見たら誰も居ないのに庭が手入れをされていると思ったのですわね……。
それと、子供……ああ、勝手に家に入ってきたから、ちょ~っとお仕置きをした覚えがありますわね。ふふっ♥
初めて出す精の味は美味しかったのが記憶にありますわ。まあ、それ以外にも屋敷にはホームレスが忍び込んだり、泥棒が入ったりしますのよ。
まあ、彼らにはそれ相応の対応はさせていただいておりますがね……うふふ♥」
(ぜ、絶対エッチなことしてる!!)
「していますわよ。エッチな、こ・と・♥
昨晩の貴女にしたものよりも激しく、相手の命を奪うくらいのものを……ふぅ♥」
「ひゃんっ!? な、なにするんですかっ?!」
「うふふ、本当……貴女いい声で鳴きますわね。今夜が本当に楽しみですわ♪」
「今夜って……、わ、わたし帰ります! ――え。あれ……? からだが、動かない……」
(なんで? 立ちあがろうとしても、この人から離れたくないって思って、体が動かなくなっちゃう……)
「あら、ワタクシは貴女に『帰って欲しい』って言ったかしら?」
「――いいえ、わたしは……おねえさまからはなれません……。――え?」
(なに? 今、わたしじゃないわたしが、喋ってた?)
「困惑していますのね。だったら、説明をしてあげますから『立ちあがって、ワタクシについてきなさい』」
「はい、おねえさま。――っ!? ま、待って! 裸のままじゃ――」
「ふふ、何を恥ずかしがっていますの? 女同士なのですから別に良いじゃありませんの」
(うぅ、恥ずかしいよぉ……。それに、この人も裸なのに普通に歩いてるし……。やっぱり、面積が少ないビキニを着ているのと裸じゃあまり関係ないんだ……!)
「酷いことを思っていますわね。貴女もワタクシといっしょに暮らすようになれば裸でも恥ずかしいという気持ちはなくなりますのよ。さ、『ここで立ちなさい』」
「いっしょに暮らすって……――はい、おねえさま。って、これ鏡……」
(裸のまま鏡の前に立たされるなんて、恥ずかしい……。あれ? お腹のところに……痣?)
「ふふ、どうかしら、貴女の裸。ワタクシはとっても綺麗だと思いますのよ。
そして、下腹部に刻まれたのはワタクシの所有物である証。これがある限り貴女はワタクシから離れられないの」
「そんな……」
「あら、貴女はワタクシから離れたいのかしら?
ワタクシから離れて、学校でイジメられ……、肉親である母親からは蔑ろにされる日々。
貴女はそんな生活に戻りたいの? イヤだったから、あのマンションから飛び降りようとしていたんじゃありませんの?」
「それは、その……」
(言い返せない。ママがお風呂に入れてくれないから、汚くなって……。
それでも学校に行かないとって思って学校に行ったら、周りから臭い臭いとコソコソ言われて……。
それを学校からママに報告されて、イライラして……ご飯もくれないことがあって……。
助けてって言っても、だれも助けてくれない。
ひとり、ずっとひとりなんだ。そう思ってマンションから飛び降りようとしてたのに……)
「ワタクシなら、貴女をひとりにしませんわよ」
「――っ!!」
「学校に行きたくないのなら、ここでワタクシと暮らせば良いのですわ。
そして、ワタクシといっしょにお風呂に入ったり、ごはんを食べたら良いじゃありませんの」
(耳元で声がささやく。
鏡に映るわたしの背中から手が伸びて、体を滑るように這っていく)
「――――んっ♥」
「ふふっ、いい声ですわね。どうですの? ワタクシの手は?」
「あったかい……です(ああ、また……ぼーっと、しちゃう……)」
「良いんですのよ。また、ワタクシにすべてを委ねても……」
「ぁ、だ……め……(だめ、なのにぃ……)」
「ふふふ、本当……可愛らしいですわね。キスしたくなるほどに……んっ♥」
「んっ、ん……んぅ……(また、流され、ちゃう……)」
(滑らせるだけだった手が、段々と触るようになっていき、次第にもまれていく……。
ダメだって、思ってても……もう、抜け出せない。
鏡に映るわたしの顔が、おねえさまとのキスをしている顔が、それを物語るように……恍惚としていた)
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