不幸ちゃんとサキュバスさん
清水裕
第1話
作者:我慢できなかったんや
―――――――――――――――
(こわ、い……。やだ。やだ。でも、生きてるのも、もう……いやだ)
「あらぁ、死んじゃいますの? このままマンションの屋上から飛び降りて、死んじゃいますの?」
「っ!? だ、れ……?」
「うふふ、こんばんわ。いい月夜ですわね♥」
(だれ? 屋上に、わたしだけしか居なかったのに……。
それに、その恰好……へ、変態さんだ……!)
「うふふ♥ 変態って思っているのが表情からわかっちゃいますわよ。
言っておきますけど、ワタクシは変態じゃありませんわよ」
「――っ!? は、ね……?」
「ええ、そうですわよ。ワタクシはサキュバス。男の精を糧に生きる悪魔ですわ」
(サキュバス……。エ、エッチな漫画とかに出てくる、あの?)
「ええ、あのサキュバスですわ」
「っ!? こ、こころ……読まれてる?」
「悪魔ですもの♥」
(悪魔……、人間じゃ、ない……。こわい、こわいこわいこわい!)
「そんなに怯えなくても良いですわよ。それより、なんで自殺なんてしようとしていますの?
折角の余韻に浸っているところに鬱屈とした気配を感じて台無しでしたのよ」
「う……。ごめん、なさい……」
「いいですわよ。それで、どうしましたの?」
「そ、の……」
「ま、言わなくても大丈夫ですわ。大方、人間同士の諍いといったところですわね?
まったく、人間という存在は愚かですわね」
(呆れたようにしているけど、この人には分からないだろうな……。
人間って、一番立場が弱い人を見下すのが当たり前な生き物だから……)
「あら、悪魔にだって階級や血統なので相手を見下す考えを持つ者は居ますのよ」
「え、あ……、こころ……読まれてた」
「ええ、ですからちゃんと言ったほうが良いですわよ。というよりも吐いて少しは気分をスッキリいたしなさいな」
(気分をスッキリ……か。そんなこと、考えたことなかったな……。
今だけ、吐き出して……いいかな?)
「……わたし、ブスだからってイジメられてるの。やること全部、クスクスって笑われて……。家に帰ったも、ママはお金が無くてずっとカリカリしてて……わたしと目が合うと『あんたなんか産むんじゃなかった!』って怒鳴ってきて……どこにも休まる場所なんて、ないの……」
「……そう言っている者たちのほうがよっぽど不細工ですわね。見た目も、心も。
ですが、貴女は本当にブスなのかしら?」
「みんな、ブスって言ってる……。だから、わたしはブスなの……」
「そうですの? ちょっと失礼いたしますわね」
「――っ!? ひゃ!? みな、いで……!」
(まえがみ、あげられた……! ブスって、思われちゃう……!)
「あらあら、まあまあ。貴女、全然ブスではないじゃないの」
「そんな、こと……」
「あら、ワタクシの言うことが信じられなくて?
すこし小汚いのが気になりますが、その前髪の下に隠れた顔のつくりも良いですし、記憶で見た母親と似ていないから……きっと父親から受け継いだと思われる青味がかった瞳も良いですわね。
そして体つきも、今は痩せていますけど、食べる量を増やせば……男を誘う体へと成長するのがワタクシにはわかりますわ♥」
(そんなこと、な――「ありますわよ。それをワタクシがこれから教えてさしあげますわ。だから――」――え)
「――んっ、んんっ!?」
(キ、キス!? キス、されてるっ!? なんで、どうして!?)
「あらあら、抵抗なんてしないでくださいな。今はただ、ワタクシに身を委ねれば良いのですから……ね?」
「ん……ん……ぁ……」
(あたま、ぼーっと、する……それに、いい、におい……。あ、よだれ、あま、い……。それに、この目……ずっと、見ていたく、なる……)
「ん、ちゅ♥ れろ、ちゅ……んっ、っふ……♥ ふぅ……、どうだったかしら?」
「あ……」
「あら、その物欲しそうな顔……、もっとキスしてほしいんですの? ふふっ、可愛らしい子ですわね」
「ぁ♥ ん、っちゅ……れろ、ん、ちゅ……♥」
(そろそろ良いですわね。ふふ、最近男ばかりで飽きてきましたから、たまには女の子を味わってみましょうかしら。
……それに、これほどまでに男を誘うフェロモンを無自覚に振りまき、成熟しきっていないというのに体つきも男性のためにあるほどの少女、放っておかないほうがおかしいですわね♥
ふふっ、貴女はどのように咲き誇るかしら♥)
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