耕平とさや香
◯体育館・中・夜
耕平(17)が体操着姿で体育館の出口に座って水を飲んでいる。耕平の首の周りにはタオルが巻き付けられている。耕平の目の前には学校のグラウンドが広がっている。
さや香「あ、いた〜」
さや香の声が聞こえ、耕平は声の方を向く。さや香(17)がT-シャツに運動用のショートパンツを履き、少し汗ばんだ状態で立っている。
さや香「おつかれぇ〜」
さや香は笑顔で耕平の横に腰を下ろし、手に持っている水筒を口に運ぶ。
耕平「あ、お疲れ〜」
耕平はグラウンドの方を見る。耕平の目線があっちこっちに行っている。さや香は水筒を横に置き、大きく伸びをする。
さや香「っはぁ〜、今日も疲れた〜」
耕平はさや香の方を目で追いながらも落ち着かない様子で目線があちこちに移る。さや香が耕平の方を見る。
さや香「それにしても堀田君偉いよね、だって入部して1ヶ月でもう居残り練やってるんだもんね」
耕平「・・・いや、別に、、、めちゃめちゃ遅れてるからさ、、、」
さや香「そうだよねぇ〜、高2からって結構大変だよね〜、それも含めて凄いよ!堀田君!」
耕平「、、、あ、いや、別に、、、」
耕平は照れたように笑う。
さや香「本当に!誰もが出来ることじゃないと思うよ?少なくとも私は無理だね」
耕平はさや香を見る。
耕平「え、そうなの?」
さや香「うん!絶対無理だね!私、人よりも遅れてるの無理だからぁ〜」
耕平「あ、そうなんだ、確かにいつも先に進んでるイメージかも」
さや香「でしょでしょ!私は皆と一緒か、皆より先に始めて、皆よりも先に進んでないとダメなの!もう自分が嫌になっちゃう!」
さや香は笑いながら話している。
耕平「、、へぇ〜、全然考え方が違うね」
さや香「堀田君は皆より遅れてた方が心地いい?」
耕平「う〜ん、あんまりそう考えたことはないかも、僕はずっと勉強とか運動とか、皆より出来ないからさ、三原さんとはもう完全に別世界にいるっていうかさ」
さや香「ふ〜ん、そうなんだぁ〜、別に、別世界だとは思わないけどね」
耕平「本当?」
さや香「うん、だって現に今隣同士で座ってるし、同じ練習メニューこなしてるし、逆にどう考えても同じ世界にいると思うよ?違いがあるとしたら、私は先を急いでいるってことじゃない?それ以外はそんなに変わらないよ!」
耕平「ああ、そうなんだ」
さや香は笑う。
さや香「まぁ、これはあくまで私の意見だけどね!」
耕平は合わせて少し笑う。さや香はグラウンドの方を見る。
さや香「あ、そろそろ時間も遅くなってきたね、私はもう帰ろっかなぁ〜、堀田君はどうする〜??」
耕平「あ〜、あと少しだけいようかな〜」
さや香「そっか、じゃあ、鍵よろしくね〜」
耕平「うん」
さや香「じゃあ、おつかれ〜」
さや香は笑顔でそう言うと、その場を立ち去る。耕平はさや香の後姿が見えなくなるまで目で追う。さや香が見えなくなると、グラウンドに目線を戻し、しばし宙を見つめる。すると、突然息を吐き出し、思いっきりニヤけながら頭を傾ける。
耕平「同じ世界かぁ〜」
耕平は何度も自分の後頭部を掻く。
友愛 Take_Mikuru @Take_Mikuru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。友愛の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます