第47話 誕生日の夜
「お誕生日おめでとう!!!」
カチャンとグラスとグラスが当たる。テーブルには、僕の作った料理が並んでいる。今日は、
ちょうど大学院の講義も無い日だったので、僕は朝から料理に取りかかったのだが、出来上がったのは
ハンバーグ、そして、カボチャ丸ごと一個から作るポタージュ、それに新鮮トマトとホタテのマリネ、アスパラガスとほうれん草のサラダ、リンゴとアイス、それにヨーグルトを添えたデザートの五品。全て気持ちを込めて作った。味は、まあ、まずまずかなと思う。その中でも、カボチャのポタージュは、ガルーダのマスターに教えてもらったレシピ通りに作ったからまず間違い無いだろう。
「うわぁ〜〜。ご馳走〜〜!宮畑君、ありがとう!!」
「いえいえ。じゃあ、食べようか」
「うん。いただきますー!」
彼女は、ポタージュを一口飲むといきなり固まっている。
「どうした?なにか変だった?」
「ち、、違うの!これって、カボチャ?とっても甘くてさらさらしてて、咽にひかからなくて、もう最高!」
「でしょう!これ、今回一番の自信作なんだ。やっぱり市販のものとは全然ちがうよね。自然の甘さっていうか…」
「うん。本当に、そうだよね」
「でしょ。やっぱり、具材が良いと料理も美味しいからね」
「だったら、北海道って最高ですね。とっても楽しみです。絶対に美味しいに決まってますよ。野菜全てが!」
あっ。確かに…。
そんな事を言われると昨日のことを思い出してしまう。
彼女は、「私を北海道、美瑛に連れて行って」と間違いなく言ったのだ。昨夜、ベットの中にいても彼女が僕の事を好きだと言ってくれたことを何度も思い出し、ついついニヤけてしまった。で、今もまた、思い出すと顔が緩んでしまう…。
「宮畑君、お顔、、変ですよ。ふふふ」
くっ。やっぱり見られてたか…。超恥ずかしい!
そして、僕らの幸せな時間は過ぎていく…。
料理を食べ終わったのを見計らって、僕はホールケーキを冷蔵庫から取り出した。これは、フルーツケーキで有名な新宿にある高野ケーキ店で購入してきたものだ。彼女が大好きなメロンがぎっしりと乗ったケーキを迷うことなくチョイスした。見た目も綺麗なのだが、とにかくと美味しそうだ。
僕は、長いロウソクを二本と短いロウソクと四本をケーキにそっとさし込み、百均で購入したライターで火を付けると部屋の電気を消した。
小さなロウソクの灯りが彼女の素敵な笑顔を照らし出す。
「じゃあ、歌おうかな」
「えっ!歌うの?」
「歌わないとだめでしょ?いっせーのーせ」
「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデーディア木綿さん、ハッピーバースデートゥユー」
「ほら、消して!」
「宮畑君、ありがとう。私、今日のこと一生忘れないよ」
ふー!!!!
「おー、凄いっ!全部消えた〜!」
「もう、人を肺活量おばけみたいに言わないで〜!」
「はははは」
彼女は、ちょっとふくれっ面して僕の方を見ている。
そんな彼女の機嫌を直すのはこれだよね。
「じゃあ、これ。誕生日プレゼント。どうぞ」
「えー、って、これ、ブランドものっていうかティファニー!?」
「うん。だって、今日は気合いを入れないとダメな日でしょ」
「え…、本当に…。いいのかな。もらっちゃっても」
「ほら、いいってば。」
「うん。ありがとう。本当に…」
「開けて…みて…いい?」
「うん。気に入ってくれたらいいんだけど…」
彼女は、青のリボンを解くと、それを綺麗畳んで水色の袋に入れた。そして、小さな箱を静かに開けて行く…。
「う、うわぁ〜!き、綺麗!!!!ピアスだ!!」
「実はね…、本当は指輪にしようと思ったんだけど、諸事情にてピアスにしました。指輪はほら、また今度ね…」
「うん。ありがとう!こんな素敵なピアス、私に似合うのかな」
「いや、
「え〜。本気で言ってる?お世辞じゃなくて?」
「あのね…。
「えっ。嫌だそんなの。私は宮畑君の彼女だし。みんなにもそう認識してもらえるように、これからは、大学でももっとイチャイチャしないとね!」
そういうと木綿さんは僕に抱きついてきた。
「宮畑君、ピアス付けて下さい」
「う、うん。女性にピアス付けるなんて初めてだから大丈夫かな…」
「大丈夫。はい。ここだよ」
彼女は、ゆっくりと僕の手を自分の耳に導く。
「どう?ピアスに負けちゃってるかな…」
ピアスを付けた彼女が僕を見つめる。
まるで女神だ。いや、天使だ…。一体なんと言えば彼女の美しさや可愛さを表現出来るのだろう…?全く自分の語彙力のなさに辟易する。
「綺麗、いや、とっても可愛いよ。凄く似合ってる」
「ほんとに…!?ありがとう!宮畑くん!」
破壊力満点の笑顔に僕は、顔中が真っ赤になる。
「どこに付けて行こうかな。そうだ!年末は福岡に帰るでしょう?その時に付けようかな〜」
「へっ?」
僕は、またもや情けない声を出してしまった。
全く、木綿さんには適わないな。まあ、明日にでも母さんに電話しておくか…。今年の正月は賑やかだよって。
抱きついたまま僕を見上げる彼女がゆっくりと瞳を閉じた。いくら臆病な僕でもこのサインを逃すわけにはいかない。
ゆっくりと彼女の顔を両手で包み込むと、僕は木綿さんに口づけをする。
そうして、長い夜が明け、清々しい朝がやってきた。
静かにベットから降りた僕が振り返ると、そこにはなんとも言えない幸せそうな顔で眠る木綿さんの姿があった。
僕たちは心も体も一つになった…。
これからはずっと一緒だ…。
To be continued…
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