第43話 ティファニーで買いものを…
指輪のサイズが分からない…。
指輪を何処で買えばいいかググっていたら、もっとも必要な情報が僕の手元に無い事に漸く気付いた。
そんな時、ふとグループラインで繋がっている彩湖ちゃんのことを思い出した。もしかして、彼女なら知ってるかも…。僕は早速、ラインに文章を打ち込む。するとすぐに既読マークがついて、彼女からすぐに返事が来た。
「うん、確か…、
七号…、それがどんなサイズかってのもさっぱり分からないが、とにかく店に行って、スタッフに聞けば何とかなるだろう…。
じゃあ、もう、今日だ!今日行こう!と自分を鼓舞させつつ、僕は新宿三丁目にある某百貨店の一階にやって来た。化粧品の香りがむちゃくちゃする中を僕は目当ての店を探して歩いて行く。
あった!水色バックに黒のロゴ…。だが、僕は、入り口まで行くものの、どうしても入ることが出来ず行ったり来たりしている。もはや、店のスタッフからすれば完全な挙動不審者だ。
そんな時…、店の中から「いらっしゃいませ。どうぞ」と女性が声をかけてくれた。僕は、覚悟を決めると、その声に引き寄せられるように店の中へ入っていった。
五名ほどいた女性スタッフが、全員僕の方を見る。
うっ、帰りたい…。
「今日は、何をお探しですか?」
最初に声をかけてくれた凄く綺麗で可愛い女性が僕に近付いてきた。歳は僕より少し上って感じだろうか?いや、化粧をバッチリしているから、年齢が上に見えるだけで、もしかして僕より年下なのかもしれない。胸のネームプレートには、『前田』と書いている。
「あ、あの。彼女への誕プレを買いたいなと思って…」
まだ、彼女ではないけれど…。ここで大見得切らせてもらってもバチは当たらないよね。
「彼女さんの誕生日プレゼントですか〜!?いいですね〜。彼女さん、絶対に喜ぶと思いますよ」
前田さんは、僕にとびきりの笑顔を向ける。僕はそれだけで、顔が赤くなる。
「プレゼントはもうお決めになってますか?ネックレスも指輪もこの時期すごく可愛い商品が沢山入荷していますよ」
「あの、その…。指輪で考えているんですが…」
「あ〜〜!!そうなんですね〜〜。では、こちらです」
前田さんに連れられて、左側のショーケースに連れて行かれた僕は、下をみるやいなや余りの種類の多さとそのプライスに愕然としてしまった。
「絶対に無理だ…」
学生である自分が使えるお金の額は、正直、ほぼ決まっている。今の僕には、出せても十万だ。近いうちに発売されると噂されている最新のカメラを買おうと貯めていたものだけど、今は
にしても、そのなけなしの十万でも買えないとは…。僕は、恥を承知で前田さんに話をする。
「ごめんなさい。実は、予算は十万なんです。指輪はちょっと無理ですね。他に女性が喜びそうなアイテムって有りますか?
前田さんは、『ニコッ』と笑い、「予算を言っていただいた方が、私も選びやすいです!その彼女さんが喜ぶアイテムを私も頑張ってご提案しますね!」というと、僕をピアスのコーナーに連れてきた。
「あの、彼女さんは、ピアスはされてますか?」
「あ、はい。しています」
「じゃあ、大丈夫ですね。あと、どんな方か教えていただければ…」
「えっと、身長は百五十五センチくらいで、痩せていて、髪はロングだったり、ポニテの変形っぽいやつとか結構変えてますね。あと、優しくて、ちょっと頑固で、そして、とにかく笑顔が素敵で…、そして、僕の作る料理が好きで…」
そんなことを言っていたら、自分でも顔が赤くなってきた。ん?心なしか前田さんの顔も赤い?
「ご馳走様です…。彼女さん、凄く可愛い方なんですね。ふふふ」
あー、やっちまった!別に外見のイメージだけを話せば良かったのに、性格のことまで話してしまった…。穴があったら入りたい…。
「お客様、今、お聴きした彼女さんのイメージですが、私はもうこれしかないと思います。昨日入ったばかりの新作なんですが、とっても可愛いんですよ」
前田さんは、僕にそう言うと、ショーケースの中から、ローズゴールドのダイヤモンド バイ ザ ヤードピアスを出した。真ん中に小さなダイヤがついている。そのダイヤが店の照明を浴びキラキラと光り輝いている。
僕は、
「本来は、ご予算をオーバーしてしまうんですが、実は、今日だけ館内全体で10%オフセールをやっているので、ご予算の十万以内でご提供できます」
「あー、良かった…。ありがとうございます。では、これをいただけますか?」
前田さんは、「ありがとうございます」というと、とびきりの笑顔をで僕を見る。「プレゼント包装、気合い入れてやりますからね!」なんていいながら、レジの方へ向かって行く。
よし、誕生日プレゼントはなんとか手に入れた。
あとは、料理と…、そして、僕が彼女に思いをぶつける…だ、な、、。
「おませしました。ご用意出来ました」
「ありがとうございます。助かりました」
「彼女さんの喜ぶ顔が私にも見えるようですよ。頑張ってください!」
「が、頑張ります!」
前田さんから妙なエールを貰いつつ、僕は水色の小さい紙袋を片手に帰路についた。
To be continued…
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