最終章
第42話 誕生日はすぐそこ!
裏磐梯の写真撮影を終えて無事に髙科アパートに到着した僕は、それからはゼミのレポートの提出や発表準備などで多忙を極めた。
十月の土日で行った写真同好会の裏磐梯合宿も、結城と僕のロケハンの甲斐あってか、とても有意義なものとなった。
ポートレートが得意な長谷部は、観光客の女子高生に声をかけ、五色沼のエメラルドグリーンを入れたポートレートを撮ったし、髙橋は桧原湖の周辺道路を走るオールドカーを高台から流し撮りで撮影していた。結城は、何でもないような日常を過ごす地元の姿を街撮りして自分でもこれだという一枚が撮れたらしい。そして、僕はといえば、
夜は、みんなが撮影した写真データをペンションにある50インチのテレビに映し、講評会を行ったのだが、僕の写真は、「お前、なんかテイストが変わったな」、「凄く良くなったな」など好評価だった。
これも全て
あれから、僕と
部屋の往き来は更に増えているものの、実は大きくは変わってない。はっ?お前、アホか!?と思う人も沢山いると思うけど、お互いの恋愛スキルが圧倒的に低いということもあるのか、なんとなくそのままで過ごしているという感じだ。
あっ、でも、他人には相当痛いようなイチャイチャはしているみたいなんですけどね…。
そうして、季節は、あっという間に秋が終わり、初冬へと変わっていく…。
朝は、長袖ジャケットの上に厚手のセーターを着ないと寒いくらいになってきた。
今、僕の部屋のソファーには、恋愛経験豊富な長谷部が座り、僕がいれたブラックコーヒーを「美味いな」などと言いながら飲んでいる。
たまたま、大学ですれ違った彩湖ちゃんが、「あのさ、宮畑君って
「やっぱり、美味しい食事だろう?その後に、告白して誕プレ渡すって感じだな」
長谷部のアドバイスにそって、グルメサイトで三つ星以上の店に電話していくものの、どの店も『全て予約で埋まっています』と事務的な返事しか返ってこない。正直、僕は愕然としていた。何故?何故なの?なんで、普通の日曜日って、こんなに混んでるの?混むのは、クリスマスの時だけじゃないの?と思わず呟くも、「ばーか、十二月頭って結構ボーナス出る会社が多いから、それでカップルは豪華な食事をするんだよ」と長谷部に突っ込まれる。
「あ〜、でも、一店くらいは大丈夫だろうと思っていただけど、まさかどこも空いてないってな〜。宮畑、お前、ほんと運がないな」
改めて、僕にとどめを刺すと長谷部はニヤッと笑った。
くっそ〜〜!ムカつく〜!
「でも、来週の外国語Bの代返をしてくれたら、最高の案を教えるけどどうする?」
今度は、悪魔の囁きだ。
外国語Bの教授は代返に非常に厳しいことで有名だ。もしもバレたら、僕の方もマイナス評価となる。く〜〜!でも、ここはやるしかない!
「いいぞ。それ、僕が代返しておくよ。だから、最高の案を教えてくれよ」
すると、長谷部は再度ニヤッとすると、こう言ったのだ。
「お前の部屋で、お前が木綿さんの一番好きな料理を作って、その後に指輪を渡して、そして抱け!」
蒼白だった顔面が、今度は真っ赤に変化する。
「お前、ほんとに、ピュアだな…。でも、もう、これ以上はほんとヤバいぞ。だって、お前も知ってるだろう?彼女、凄く可愛くなったじゃないか?三つ編みからさらさらロングに、そしてメガネからコンタクト、さらには着る服が清楚からちょいエロまで全て超お似合いだ…。だから、此処三ヶ月くらいで五、六人から告られたらしいし、彼女の事が好きという男が絶賛増殖中らしいぞ。だから、お前はいつまでも彼女が自分のことを気に入っているとか思わない方がいい。これは絶対だ。二度と言わないから良く聞け。彼女が他の男に取られて死ぬ程哀しいと思うのであれば、この誕生日に決めろ。いいな!」
長谷部は、僕に対する優しい気持ちをあえて強い言葉で発してくれた。だから、僕は、その言葉意味をしっかりと考え、そして行動しなければならない。
「あっ、因みに、十二月十三日って結城の誕生日って知ってた?お前、どうすんの?」
「お前どうすんのって、どうもこうもないよ。皆んなで誕生日パーティーでもしたらいいんじゃない?」
「あ〜あ、どうなっても俺、知らねからなー」
そういうと長谷部は、僕のソファーにバタンと倒れ込んだ。
To be continued…
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