第31話 宮畑木綿(ゆう)という女の子 その四 2/2

 明日から後期の授業が始まるという日の夜、彩湖さいこからラインが入って来ました。


彩湖:『木綿ゆう、明日って何するか聞いた?』

木綿:『ううん。彩湖さいこ知ってるの?』

彩湖:『なんか、教授との面談って、進路のことなんかが中心らしいよ』

木綿:『えっ?そんなのまだ、考えてないよ』

彩湖:『私もそうだよ〜』

木綿:『なんて言おうかな・・・』

彩湖:『なんかさー、目標とそれを達成する為の方法を聞かれるらしいよ』

木綿:『へっ』

彩湖:『だよね。私もそんな感じ』

木綿:『彩湖、なんでそれ、わかったの?』

彩湖:『うん。サークルの先輩から聞いた。あの教授、毎年そうなんだって』

木綿:『そっか〜。宮畑君にも教えてあげなきゃ』

彩湖:『そうそう。今から部屋に行って襲っちゃえ!』

木綿:『えー!!!!』

彩湖:『それは冗談だけど。木綿ゆう?』

木綿:『ん?何?』

彩湖:『言おうかどうか迷ってる』

木綿:『えっ?なに?』

彩湖:『うん。木綿ゆうの旦那の件だよ』

木綿:『もう!旦那って。違うし。まだ。』

彩湖:『ふふふ。まだって!木綿ゆうも言うようになったね〜』

木綿:『こら、茶化さない!教えてよもう!!気になって眠れないよ』

彩湖:『あのね、これはちょっと聞いただけだから、本当かどうか分からないよ』

木綿:『うん』

彩湖:『木綿ゆうの旦那って、写真同好会じゃない』

木綿:『うん。そう聞いてる』

彩湖:『そこの部長って誰か木綿ゆうは知ってる?』

木綿:『えっ、知らない』

彩湖:『やっぱねー』

木綿:『それが関係あるの?』

彩湖:『そうだよ。昨年の学祭でミスコンしたの知ってるよね』

木綿:『うん。知ってる。みんな凄く綺麗だった』

彩湖:『あのさ、そこで、二位だった結城加奈子ってのが写真部にいるんだよ』

木綿:『え〜!!そうなの〜』

彩湖:『で、その子が部長で、木綿ゆうの旦那が副部長だって』

木綿」『へ〜。宮畑君が副部長なんだ〜』

彩湖:『で、ここからなんだけど、驚かないでね。噂だよ。ほんとに』

木綿:『うん。わかった。早く言ってよ〜』

彩湖:『結城さんって、宮畑君が好きなんだって』

木綿:『えっ、嘘っ?』

彩湖:『だいぶん前から好きみたいだよ』

木綿:『もしかして、すでに付き合ってる、とか…!?』

彩湖:『えー、それはないって。宮畑君、木綿ゆうが好きなんじゃない?』

木綿:『そうか…な…』

彩湖:『大丈夫だって』

木綿:『でも、結城さん、モテるだろうね』

彩湖:『まぁ、そりゃ、そうだろうね』

彩湖:『こら!木綿ゆう!既読スルーしない!』

彩湖:『木綿ゆう〜。早く戻って来い〜』

彩湖:『木綿ゆう?』


 宮畑君に会いたい…。会いたい…。会いたい!


木綿:『ごめん。彩湖さいこ、私、行ってくる』

彩湖:『へっ?』

木綿:『じゃあ、またね。おやすみ』

彩湖:『木綿ゆう木綿ゆう?』


 私は、返事をしないまま、宮畑君の部屋に急いで行きました。

 そこから先の事は、もう言わなくても分かってますよね?


 でも、勢いって怖いですね。

 私は、宮畑君の夢を聞いて、その夢に私も居させて欲しいとお願いしたのです。宮畑君は、ビックリしていて、言葉をなくしていたけど、私は本気です。

 おかげで、私の夢は決まりました。明日、教授に言います。


「私の夢は、宮畑君の傍にいる事、そして、家で執筆活動が出来る職業に就くことです」ってね。


 実は、昨年、小さいですけど小説の賞をいただきました。

 私は小さい頃からとにかく書く事が好きで、ずっと何かしらを書いていました。

 そうそう、困ったことがあったら何通りもシミュレーションをする癖なんかも、実は役に立ってましたよ。だって、全部を文章化するのって本当は大変なんです。でも、小さい頃からやっていましたから、今ではすぐに書き出せるんです。


 あっ、話が逸れましたね。

 そう、私の夢は、宮畑君の傍にいる事、そして、家を守りながら小説を書く事。我ながらなんて良いアイデアでしょう。そして、なんて素敵なんでしょう。


 もう、明日からは以前の私ではありません。

 大学院デビューするくらいの気持ちで頑張ります。宮畑君に釣り合う女性になる為には、もっともっと頑張らないと!

 でないと、結城加奈子さんに宮畑君を取られてしまうかも知れませんし…。


 黒縁メガネは引き出しの奥にしまいました。

 三つ編みの髪形ももうしません!


 宮畑君を好きだという結城さんは、ミスコン二位の美少女です。

 私はきっと可愛さでは負けますけど、宮畑君の傍に居て彼を幸せに出来るのは私だけなんです。


 だから、明日からもう全力です。

 全力で行きます!



To be continued…

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