第26話 また、明日。

 僕らは福岡から髙科アパートに帰って来た。


 飛行機の中、そして、羽田空港からの電車の中でも、僕らは福岡の思い出話に花を咲かせ、時には腹を抱えて笑った。

 だけど、駅からアパートまでの歩き慣れた五分足らずの道を僕らは何故か無言で歩いた。そして、髙科アパートに到着したのだ。


 僕は、ここでこのまま彼女と別れることが嫌だった。でも、僕の部屋においでなんて言える訳がない…。


 心がぎゅっと痛くなる。

 もっと彼女と一緒にいたい…。

 

 僕の気持ちはとても我が儘だ。そんなこと出来るわけないのに…。


 もしかして、彼女も僕と同じ気持ちなのではないのだろうか?

 いや、そんなことあるはずないじゃないか。僕はどうかしている。自分でも呆れるくらい自分勝手な妄想を頭の中に巡らせて何を期待しているのだろうか…。


 そんな僕を彼女はじっと強い瞳で見つめている。すると、僕に向かって深々とお辞儀をした。


「色々とありがとうございました。凄く楽しくて、私、今も夢をみているみたいなんです」


 顔を上げた彼女は、ちょっと瞳を潤ませているように見えた。


「僕も、同じだよ。こんなに楽しい時間って今まで経験なかった。ありがとう」

「いえ、こちらこそ、ありがとう」

「いや、僕の方こそ…」

「ううん。それは私のセリフです」

「いや、僕の」

「いえ、私の、、」

「・・・・・・・」



「ふふふ」「ははは」



 僕らは溜まらず笑い出す。


「今日は早く寝た方がいいよ。じゃあね」


 僕は、意を決して踵を返すと、アパートの階段を登ろうとした。

 その時、「待って!」と彼女が僕にストップをかける。


「あの、宮畑君!!明日、朝六時にここに集合ですよ」

「ん?へっ?」

「もうー!忘れたんですか!一緒に走るんですよ!」


 あー、すっかり忘れてたな。

 福岡で彼女と話をしていた時、流れでそうなったんだっけ。


「明日も宮畑君と一緒ですね…」


 彼女は、小さな声で呟く…。


「ん?なんか言った?」

「もうっ!聞かなくていいんです!」


 ちょっぴり拗ねた彼女に僕は、ゆっくりと左手を差し出す。

 彼女も「ふふっ」と笑うとゆっくりと左手を差し出す。そして、、僕の手へと絡ませた。


「じゃあね」

「うん。また、明日…」


 明日も僕らのこの関係は続いていく……。


 彼女が心なしか寂しそうに手を振る姿を見ながら、僕は髙科アパートの階段をかけ登った。



To be continued…




- - - - - - - -


第一章はここまでです。


ここまでのストーリーはいかがでしたでしょうか?

初めてのラブコメ的な作品ですので、違和感があるところも多かったと思います。

それでも沢山の方に温かくフォローしていただき、『いいね』をしていただけたことを心から感謝致します。



第二章は、大学院生活のエピソードが中心となります。

引き続きよろしくお願い致します!

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