第24話 鍾乳洞へ行こう!

 入り口でチケットを買った僕らは、予め持参してきたビーチサンダルに履き替える。因みに、彼女が履いているのは、行きがけにホームセンターで購入したものだ。


「じゃあ、行こうか!」

「はいっ」


 僕らは、大きく口が開いた鍾乳洞へゆっくりと入っていく。


「うわぁ〜。涼しいですね〜〜。凄いっ!!ほら、、あんなに沢山の石のつららができていますよ〜。あれが、石灰岩が溶けたものなんでしょうか?」

「うん。そうだね。鍾乳洞って、長い年月をかけて水によって石灰岩が溶けて、それが空洞になって出来たものなんだよね」

「流石、宮畑君!詳しいですね〜〜!」

「いや、ほら、この入場チケットの裏にそう書いてあるから」

「ふっ。本当に宮畑君は正直なんですね。ふふっ」

 

 これって、褒められているのか!?全くわからん!


 僕らは、時折、「わ〜!凄い!」を連発して、どんどんと穴の奥へと進んでいく。すると、約五百メートルくらい進んだ所に、『奥の細道』という看板があった。どうやら、ここからは、水の中を歩いて行かねばならないみたいだ。


「最初は冷たいけど、すぐに慣れるからね」

「はいっ。分かりました」


 そう彼女に言うと僕は、先陣切って水の中に入っていく。


「くっ、、、つめ、、、冷たい!!あー、、、無理っ!無理だわ!」


 想像以上の冷たさに飛び上がる。

 やはり、不埒な計画って叶うはずないんだな。だって、僕がイメージしていた冷たさよりも何倍も冷たい…。いや、何十倍も冷たいじゃんか!


「あー、冷たい〜。ふふ〜〜!気持ちいい〜〜!」

 

 なのに、彼女といえば、ピシャピシャと音を立てながらどんどんと進んで行くではないか。もしかして、この水が冷たくないとでも?


「ちょっと待った!木綿ゆうさん!!」


 しっかりアテンドして、いいところを見せたかったのだけど、こんなんじゃ僕のイメージがた落ちです。



「あー、楽しかった!」


 鍾乳洞を出た僕達は、鍾乳洞入り口の横にある茶屋で一休みすることにした。

 彼女は、氷が見えないくらいイチゴと練乳が乗った『特製かき氷』を食べながら、余韻に浸っているようだ。


「東京では、なかなかこういう経験はできないですから。しかも、水がすごく冷たくて、それにとっても綺麗でした!それと、天井に何本も生えてるつららや下からにょきっと伸びている柱も幻想的でしたし。とても楽しかったです。宮畑君、ありがとうございました!」


 彼女の最高の笑顔がまた見れた!

 良かったぁ、ここに来て…。


 因みに僕は、冷えすぎてまだじんじんしている足の指を密かにさすりながら、温かいぜんざいを食べています。あー、情けない!!


「さあ、行こうか!」

「はいっ!」

「「ご馳走様でした〜」」


 ちょうど茶屋には僕たち二人しかいなかったということも有り、店で暇してるおばちゃん達がみんな木綿ゆうさんの周りに集まっては、あれやこれやと話しかけた。だが、彼女は、嫌な顔一つもせずに笑顔で会話を紡ぐのだ。

 本当に性格がいいんだなぁ。しかも、それが素なんだよな、、。


 僕は、レジに座ってるおばあちゃんに「お会計お願いします」と近づいていく。


すると、


「すごかべっぴんさんやし、とっても良い子ばい。お兄さん、大事にせなあかんとよ」


 そう言いながら、お釣りと一緒にアメちゃんを二つ渡してくれた。


 そりゃそうだろな。木綿ゆうさんみたいな可愛い女の子は正直滅多にいないだろうし、しかも、裏表のない性格の良さが常に滲み出ている…。 

 そんな彼女が僕と一緒に帰省して、僕の実家に泊まって、今こうして遊んでいるなんて…。


 なんて言えばいいのだろう?


 良いことが沢山起きすぎてて、これからそれを補うために悪いことが起きるとかないよね!?

 幸せすぎて不安になるって、こういうことなのかなと生まれて初めてそう思う。


 そんなネガティブなことを考えていると、先を歩いていた彼女が、立ち止まって振り向いた。


「ん?宮畑君、行きますよ!帰りは駐車場まで競争です!負けたら罰ゲームがありますからね。はいっ。スタート!」


 おいっ!!走りながらスタートってそれは酷いよ!!

 絶対に僕が負けるじゃんか〜!




To be continued…

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