第21話 やっぱりハプニングは起こりましたの巻

「ほら、お風呂どうする?このまま寝たら風邪引くよ」


 どうやら、彼女も僕と同じようにアルーコルに弱いようだ。小さいコップに入れたその半分くらいのビールを飲んだだけなのに、今、ソファーにもたれたまま眠っている。


 カレーをお代わりした彼女は、僕の母さんとも屈託なくしゃべり、随分と盛り上がっていた。


「ご飯を作ってもらったけん、食器を洗うのは母さんがやるばい」といって母さんが立ち上がった時、「洗い物は私がやります」と彼女も立ち上がる。

 だが、母さんに「いいから!長旅で疲れとうやろ?ゆっくりしときんしゃい!」と言われ、「いえいえ、私が」、「私がやるばい」、「いや、私が…」とやり合っていたのだが、最終的には、「では、お言葉に甘えてゆっくりさせていただきます」と彼女が折れたのだった。

 そして、ソファーで僕とテレビを見ていた彼女は、いつの間にか眠ってしまったというわけだ。


「やっぱり、初めての家に来て緊張もしとったとよ。もう少し寝かしときんしゃい。いい子やね。ほんとに」


 そう言って、母は、二階に上がっていった。

 残された僕は、彼女の横に座って、ただ寝顔を見ている。ふふっ、可愛いな、、それに、とても気持ち良さそうだ。

 そう思った瞬間、僕は無意識に彼女の頭を撫でていた。


「ふぅっ」


 彼女がゆっくりと瞼を開ける。僕は、慌てて彼女から手を離す。


「わ、私、もしかして、、寝てました?」

「う、、うん。寝てたよ。すっごい気持ち良さそうにね」

「えー!!!なんで起こしてくれないんですか!!」

「これって、僕が怒られるところなの?」


 笑いながら話す僕に、「うーん、悪いのは私ですけど…。でも、でも、宮畑君も悪いでしょう?だから、おあいこということで…」と話す彼女。

 言ってる意味が全くわからないが、そういうことにしておこう。


「あのさ、疲れてると思うから、先に風呂に入りなよ」

「宮畑君は入ったの?」

「いや、まずは、お客様が最初でしょ?」

「えっ、、、私のあとに宮畑君が入るんで、、、すよね?」


 そういうと彼女は顔全体が真っ赤になっていく。そもそも、酔って赤く染まっていた顔がさらに深みを帯びていく。


 確かに、よく考えれば、彼女の入った湯船に僕が入る…。って、、これは!!!

 彼女の豊かな胸を想像した僕は、ぶんぶんと顔を左右に振って妄想を打ち消す。


「いや、僕はいつもシャワー派だから、木綿ゆうさんは、ゆっくりと浸かってもらって構わないよ」


 とりあえず、今はそう言うしかない…。

 本当は、温泉でも長い時間、湯に浸かるのが好きなことは、今は黙っておこう。


「うん。わかった。それじゃあ、先に使わせてもらうね」


 そういうと、彼女は、スーツケースを置いた部屋に行き、しばらくすると、ビニール袋に入れた着替えを抱え、リビングにやってきた。


「はい。こっちがお風呂だからね。じゃあ、ごゆっくり」

「ありがとう!では、お先です」


 そう言うと彼女は脱衣所に入っていく。


 ん?そう言えば、今の彼女の髪型、、長い髪を一つにして上げていたのでは?一瞬見えたうなじに今ごろ「ドキッ」としてしまう。


 しばらくすると、風呂場からシャワーの音が聞こえてきた。

 僕は、何とも言えない気持ちをごまかすためにリビングに戻り、テレビをぼぉーっと見ているが、全く頭に入ってこない。


 どれだけ経っただろうか?

「あの…」と小さな声が風呂場の方から聞こえてきた。


「ん?」僕は、恐る恐る近づいて行く。


木綿ゆうさん?どうかした?」

「あの、、バスタオルってお借りできますか?」

「あっ、そうだった!!ごめん!」


 僕は、慌てて風呂場の脱衣所のドアを開けようとした。


「ちょ、、ちょっと待って!!」

「ふぇっ!!」


 時既に遅し…!!

 彼女が慌てて風呂場に入る後ろ姿をバッチリ見てしまった。


「ご、、ごめん!!!」

「もしかして、見た?見たの?」

「いや、ほんの後ろ姿だけ。細いのに柔らかそうだなぁ〜なんて…」

「ば、、、ばかぁー!!!!!」


 ん?これって、僕らが近づくきっかけになった『下着事件』となんとなく似ているのでは?

 あー、、また、いつものように、一言多かったみたいです。


 反省するにも刺激が強すぎて、、。僕は今日、絶対に、眠れないと思います…。




To be continued…

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