第20話 カレー作りは甘い!?
ストアで、僕らは、仲良くカートを押しながら食材を選んでいる。今日は、簡単に出来るカレーライスにすることに決めた僕は、ぽんぽんと選んだ食材をカゴの中に入れていく。
僕の家のカレーは、挽肉を使ったいわゆるキーマカレー的なものだ。タマネギ、ナス、ピーマン、人参、トマトが入り、最後にヨーグルトを入れると完成という、作り方は至ってシンプルそのもの。
「あのー。今日の夕食、一緒に作ってもいいですか?」
彼女は、カゴに入れたナスを手に取り、じーっと見ている。
「うん、いいよ。一緒に作ろうっかね」
「うん!」
夕食時に飲むアルコール類やジュース、そして明日の朝の食材なども購入した僕は、二つのビニール袋を両手に帰路につく。
「一つ、持ちますよ」
「いや、いいよ。結構重いから」
「だって、私が持たせてるみたいにみえるじゃないですか?怖い女みたいに見られたら嫌だし…」
「くっ…」
『いやいや、、、十分に怖いです!』と心の中で突っ込んだ途端、僕は、ついに吹き出してしまう。
「もう!なんなんですか!?私、何か変な事言いましたか!?」
「ないない。なんにもないってば。急ごう!」
どうしようもうなく可愛いよ、、本当に、、。
両手に荷物がなければ、きっと今、彼女の手を引いていたに違いない…。
やっぱり一つ、袋を持ってもらっておけば良かったかな…。
◇◇◇
「えっと、まずは、タマネギのみじん切りを炒めます」
「はい。まずはタマネギのみじん切りっと…」
「次に、挽肉を入れて、火が通ったら、人参を入れます」
「はい。挽肉、人参、、」
「で、ここで、塩、コショウを少々」
「塩、、コショウ、、、、」
今、僕らが何してるかって?
どうやら、彼女は、カレーも満足に作ったことがなかったみたいで、僕が料理を作るさまをスマホで動画撮影しながら、忘れないように自分でも声を出してメモしているという感じかな。
「で、次は、どうするんですか?」
「あっ、次はね、ナスを入れてしんなりしたら、ピーマンとトマトを入れます」
「はい。ナス、ピーマン、トマト…」
その時、母さんが台所に顔を出す。
「いい匂いしちょるね〜。楽しみやわ〜。じゃあ、母さんは今のうちにお風呂でも洗ってくるかね」
「「はーい」」
またまた、ハモってしまう。まあ、これくらいは当たり前か…。
いやいや、絶対にそうではないはずだが、もはや、僕と彼女なら仕方ないと思っているのが凄いことだなと…。
「はい。全部に火が通ったので、ここで水を入れます」
「水を適量入れるっと…」
あれっ!?今、なんか、僕の顔にカメラが向いていたような…!?
んー、そんなはずはないか…。
「で、こまめにアクを取ったら、コンソメを一個入れて、それからカレールーを入れます。僕はいつも、二種類のカレールーを入れるんだ。一つは辛口で、もう一つは中辛。で、その日の気分によって分量はまちまちです」
「はい。二種類っと、、。えっと、カレールーのパッケージを見せてください」
「はい、これ」
「いえ、ちょっと持ち上げて胸のあたりに…」
「えっ、、こ、これでいい?」
「はい。じっとしててくださいね〜。はい、オッケーです」
なんか、、やっぱり変な気がするな〜。なんで、カレールーのパッケージを撮るのに僕の上半身のショットがいるんだろう?不思議だ…。
「もう、ほぼ完成なんだけど、最後に、大さじ三杯くらい、、いや、それよりちょっと多めにヨーグルトを入れます。はい!これで完成!!」
「ヨーグルトをたっぷり…。うわぁ〜!!!美味しそう〜!」
彼女は、目をキラキラさせている。本当に食べるのが好きなんだな。
なのに、どうやって、この細い身体の線を維持できるのだろう?生まれつきなのかな?それとも、影で努力しているとか?うーん、どっちなんだろう?
「ん?なにか?私の顔についてますか?」
やばい、、知らず知らずに彼女全体を視線で追ってしまっていた。
「い、いや!何もないよ。さあ、じゃあ、夕御飯にしよう」
「はいっ!!」
テーブルには、近所の農家さんからお裾分けで貰ったという葉物のサラダと野菜タップリキーマカレーとビールやジュースが並ぶ。
「じゃあ、まずは乾杯ばしよっかね!」
母さんは、早速ビールのプルタブを引く。
「
「はい。少しですが…飲めますよ」
「じゃあ、ビール一缶を半分ずつにしよっか?」
「はい!それで!」
僕は、二つのコップにビールを注ぐ。
「じゃあ、二人のみやはたゆうに乾杯!」
「なに、それ!!まっ、いいか。はい。乾杯〜」
「「「乾杯〜」」」
うーん、やっぱり冷えたビールは最初の一口が最高だよなぁ〜。正直、僕はアルーコルに強くない。ビール一缶なんて飲んでしまうと、即寝てしまうという感じだ。流石に、今日は彼女もいるし、勝手に一人で寝てしまう訳にはいかないから、これくらいの量が丁度いい。
「う〜!!やっぱりあんたの作るカレーは美味しかね〜」
母さんはスプーンを口に運ぶ度に美味しいを繰り返している。彼女も、それに負けないスピードで食べている。そして、こちらは、口に運ぶ度に僕の顔を見つめて、「うんうん」と頷くのだ。
もう、この表情、、。反則だよ!!!
「あの、、恥ずかしながら、、、、おかわりしてもいいですか?」
「いいけど、、、結構な量だったのに大丈夫?」
僕が、心配して言うと、母さんが横から口を出す。
「あんたね!!!こんなに細い子を捕まえて大丈夫なんておかしいやろうもん。もっと食べらなあかんばい。ほら、好きなだけご飯ついで食べんしゃい!」
「はい!!食べます!!」
あー、、、もう、、。
でも、いいかっ。こんなに美味しそうに食べてくれる姿を僕ももっと見たいや。
彼女がカレーを注ぎに台所に行った際、
「佑!あんた、いい子と知り合えて運が良かとよ。感謝せなあかんばい」
母さんが小さい声で僕に呟く。
本当にそうだな…。僕と同性同名のみやはたゆうさん。
もっと君のことを知りたい…。今、僕は、強くそう思っていた。
To be continued…
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