第18話 元カノ
「じゃあ、母さん、ちょっと行ってくるけん」
「気をつけるっとよ〜」
僕は、彼女、
近くとは言え、歩いて十分は余裕でかかる。
夕方にさしかかった陽射しは、昼に比べると行く分和らいでいるが、まだまだ勢いはある。僕らは、薄らと汗をかきながら、スーパーを目指した。
横断歩道で赤信号に引っかった時、「暑いね」と僕は彼女の方へ振り向いた。すると、彼女が僕に向かって、ハンカチを差し出して来たのだ。
「あっ、ありがとう」
そう言って、僕がそのハンカチを受け取ろうとしたら、彼女は、「違います」とはっきり言った。
「へっ?」
「だから、違うんです!ちょっとかがんでください」
「なんで!?」
「なんでじゃありません。いいから!!」
ちょっと怒り気味の彼女は、本当に迫力がある。これだけ可愛い顔の女子に怒られるのって、なんだか癖になりそう…。って、そんなことを言ったら変態扱いされるから、ここだけの話にしておこう。
僕は、彼女の迫力に負けて身体を少しかがめる。彼女は一歩僕に近づくと、僕の額と首の周りをハンカチで拭きだしたのだ。
「はひっ!?」
僕は、誰が聞いても変な奴状態の情けない声を上げる。
だが、彼女はそんなことはお構いなしに丁寧に僕の顔と首の汗をハンカチで拭ってくれている。
『あー、睫毛、こんなに長いんだ。指、細いな〜。あっ、薄くネイルしてるんだ、、。水色に黄色のアクセントか…。素敵だなぁ〜』
僕は、彼女にされるがままに立ち尽くしていたが、横断歩道が青になったことに気づくと、「あ、ありがとう。もう、いいよ。ハンカチ汚しちゃったね。ごめん」と歩き出す。
彼女は、僕の横に小走りで駆け寄ると、「いいの。だって、私が勝手にやったことだしね。ふふっ」と笑顔を向ける。
あー、、何度も言うけど、やばいです。
可愛すぎます。これって反則でしょう?こんな時、僕は一体どんな反応をしたらいいの?と思ったその時…、、
「み、宮畑君!?」と呼ぶ声が聞こえた。
なんだか懐かしい声だ。
「中塚!?…」
それは、高校の卒業式の日から僅かな期間だけ付き合った
「なにしとん?」
「ねえ、帰省なん?まだ東京におるん?」
「元気にしとった?」
「背が伸びとうね。髪の毛が栗色!染めとっとう?」
中塚は、駆け寄ってくると同時に、矢継ぎ早に質問を投げかける。
なんだか興奮しているように見えるけど…。
「久しぶりやな。元気にしちょった?」
「うん。凄く元気。でも、退屈しとっとよ。ずっとね」
中塚は、そう言うと、急に静かになった。そして、隣にいる彼女を見ると、僕にちょっときつい視線を向けると言葉を発した。
「この人、もしかして?彼女なん?」
「い、いや、、。そうじゃないけど、、、」
「ふ〜ん、そうなん。へぇ〜」
まだ付き合ってないから、そう言うしかないやん!
だけど、彼女の方を見ると、ちょっとふくれっ面をしているようにも見える。
でも、僕、間違ったこと言ってないよね?本当に、まだ付き合ってもないし!!
中塚は興味津々で、彼女に近づいていく。
「初めまして。私は、随分前に宮畑君とお付き合いしてた、そう、元カノの中塚香住っていいます」
「あっ。こんにちは。私は、宮畑くんとご一緒させてもらっているみやはたゆうといいます」
「はっ?えっ?」
中塚は、言葉をなくし、僕の方をじっと見つめる。
いや、
あー、ややこしい〜!
To be continued…
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