第17話 宮畑木綿という女の子 その三
私は、今、宮畑君の実家にお邪魔しています。
宮畑君のお母さんはとても面白い方で、そして、とてもいい人です。博多弁もそうだけど、すごく暖かい感じがします。
今日は激動の一日だったなと改めて思っています。
朝六時過ぎ、アパートの階段を降りてくる宮畑君をじっと待っていた私は、彼の足音を確認して扉を開けました。
私を見た時の宮畑君は、正直あっけにとられて言葉をなくしてましたね。私も待っている間、ドキドキが止まらなかったのです。このドキドキはどこから来ているのでしょうか!?考えても全くわからないので、『あーー』とまた叫びそうになりました。
初めての飛行機は、本当に恐怖そのものでした。だけど、宮畑君がさりげなく気遣ってくれて、本当に助かりましたよ。流石です。本当に!
私が、少し落ち着きを取り戻した時、客室乗務員の可愛らしい女性が、『飲み物はいかがですか?』と聞いてきたのです。それは宮畑君に向けた言葉であって、私ではなかったのですが、勘違いした私は、「えっと、リンゴジュースで!」って答えてしまいました。
勿論、宮畑君が頼んだのもリンゴジュースですよ。だって、今までの経験上、私と宮畑君の趣向は凄く似ているということはリサーチ済みです。ですから、私は、また同じだ!くらいの気持ちだったのですが、客室乗務員の女性にはツボだったらしく、「ふっ」と笑いが漏れたのを私は見逃しませんでした。
その客室乗務員さんは、飛行機を降りる際、私達を見つけると、「これからもお幸せに」と言ってくれました。
なぜでしょう!?胸の奥がきゅんと疼きました。これは、これは何という気持ちなのでしょう?
彩華にも随分聞いたのですが、結局教えてくれなかったこの胸の痛み。これがわかるまで、私は宮畑君に付いていくのです。
太宰府天満宮で食べた梅ヶ枝餅は、私にとって忘れられない一品となりました。こんなに美味しいお餅があったんだとまさに目から鱗です。そんな余韻を楽しみながら境内を散策していた時のことです。
「今日は、何処に泊まるの?」
宮畑君が突然、私に尋ねてきました。どうやら、私をホテルに送り届けてから、実家に帰ろうと思っていた様子です。
だけど、それって、あんまりじゃないですか?私が邪魔と思っているのでしょうか?もしくは、一緒にいてもつまらないのでしょうか?正直、かなりイラッとしました。
「はい?ホテルは取ってませんが…」
しかし、宮畑君は、「えっ?」しか言葉を発しないのです。これって、全く予想していなかったということなのでしょうか?
私が、今朝、ついて行ってもいいですか?と聞いた時、承認した時点でこうなることを予想していなかったのでしょうか?
いつもの宮畑君なら何通りもシミュレーションしていたはずです。なのに、変ですね。なにかあったのでしょうか?
でも、このままでは、宮畑君の実家に連れていってもらえないかも…。そう思った私は、最寄り駅を聞き出し、乗換案内のソフトで検索して、この駅まで私も行きますという決意を示しました。優しい彼なら、もうこれ以上は反論しないでしょう。
私って、結構、我が儘で頑固な所があるみたいですね。自分でもこんな感情が湧き出ることに驚きました。一体何故でしょう?
そうだ。ここで、私の家族構成を述べておきましょう。
私の家は、父、母、兄、それに私の四人家族です。父は、公務員で、母は保険の営業をやっています。国立の大学を卒業した兄は、今年、弁護士資格を取得して晴れて有名弁護士事務所に就職が決まりました。
身内の私が言うのもなんですが、兄は凄く格好良くて、勉強が出来て、とにかく凄く自慢できる兄なのです。
高校生になっても私はいつも兄について出かけてました。友達には、「あれだけイケメンだったら
勿論、勉強もよく教えて貰いましたよ。そのおかげで、今の大学院に合格出来たといっても過言でもないかもしれません。兄は、凄く教えるのが上手なんです。
その自慢の兄が、昨年、婚約しました……。
兄には彼女なんていないと思っていたのに、なんと三年も付き合ってた女性がいたなんて…。前に、その彼女を家に連れてきた際、彼女の方ばかり見ている兄の興味を私に向けるべくちょっと意地になって行動してしまったことがあります。
その時の気持ちが、今日、色んな場面で宮畑君に感じた私の気持ちに少し似ているような気がするのです。でも、本当のところはどうなのでしょうか?
私が宮畑君に感じる気持ちとその時の兄に感じた気持ち、、、、。
似ているようで、似てないのかな。いや、その気持ちは遠い親戚みたいなもので、実は、種類は同じなのでしょうか?
あー、、わかりません。宮畑君の事を全部知ればわかるのかもしれません。ならば、私は、明日はもっともっと近づくのみです。
頑張りますよ。宮畑君、、、覚悟しておいてください!
To be continued…
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