第11話 宮畑木綿(ゆう)という女子 その二

 私は、今、宮畑君の横で讃岐うどんを食べています。

 周りから見たら、私達はカップルに見えるのでしょうか?そう思うと少し嬉しかったり、恥ずかしかったりしてしまいます。


 結局、私は、宮畑君の帰省に付いて行くことを決めました。友人の彩湖は、「行っちゃえ行っちゃえ」と無責任に煽るだけでしたが、マスターも「佑も喜ぶと思うよ」と言って背中を押してくれました。



 前にもお伝えしたように、私は高校時代、、、本当に嫌な時間を過ごしました。『可愛い!』、『姫!!』なんて言われ続けて、とにかく沢山の男子生徒から常に見られる中で、言葉では表現出来ないくらいの窮屈な時間を過ごしていたのです。

 そして、卒業するまで、多くの男子に交際を申し込まれました。ですが、私の内面まで好きになる人なんて一人もいなかったと思います。


 だから、、、

 私は、いつの間にか男性が怖くなっていたのです。


 だけど、初めてのゼミで知り合った、私と同じ名前を持つ男性…。彼だけは、何故かストンと自分の中に入り込んで来たのです。



 私が風邪でふらふらしている時のことも、、、。


 誤解しないで欲しいのですが、私は、普通ならどんなに弱っていても男の人に気を許したりしません。だけど、宮畑君だったから、部屋にまで入ってもらったのです。

 彼の作る料理は、本当に優しくて、私は彼がお裾分けに来てくれるのが、いつの間にかとても楽しみになっていました。所謂、胃袋を掴まれたということでしょうか。本来は、女性の私がそうしたいのですが、生憎、私は料理が苦手なので、無理はしません。あっ、その代わり、掃除や洗濯は上手なのですよ!そこは、あえて言わせてもらいます。


 熱でうなされている私に、特製おじやを作ってくれて、、、。薬を飲んで、冷えピタシートをおでこに貼ってもらった所までは覚えているのですが、翌朝、気がつくと私はベットで眠っていました。


 確か、私はソファーにいたはず…。


 なのに、ベットにいるということは、彼が私を抱き上げたっていうことでしょうか?もしかして、お姫様抱っこをされたのでしょうか?そう思ったら、折角三十七度まで下がっていた熱がまた上がったような気がします。


 それからというもの、私は、宮畑君の顔をまともに見ることができなくなりました。ただ、必要最低限の挨拶はしましたよ。でも、すぐに逃げるように彼の傍を離れたのです。


 私は、今まで一度も男性とお付き合いをしたことがありませんし、好きになった男性もいません。だから、彼を見た時の『ぎゅっ』とする気持ちがなんなのかさっぱり分からないのです。もっと話したいけど、彼を見るだけで胸が痛くなる…。

 彩湖に聞いても、「そんなの簡単じゃんか。それ、本気で聞いてるの?」ってまともに相手をしてくれません。でも、私は、知りたいのです。だから、彩湖に会う度に聞いていたら、「もう、一緒に過ごしてみたら」と言い放たれたのです。

 でも、私は、その言葉を聞いたとき、確かにそうかもしれないと思ってしまったのです。


 だから、繰り返しますが、今、私は、宮畑君と並んで、ぶっかけうどんの冷たいやつを食べています。


 彼は、私の急な申し出にも快く承諾してくれました。そして、いつものようにさりげなく私の事を見てくれているように感じます。


 さっきも、ずっと私の顔を見つめてくるから、本当に恥ずかしかったのに、「前歯にネギが付いてるけど」なんて、さらっと言うんです。

 私がどれだけ宮畑君の横で心臓バクバクしているかを知らないのでしょうか?

 

 私は、宮畑君がこれまで知っている男性とは全く違うと話すと、彼は、「そうかな〜。僕は、いたって平凡な何の取り柄もない男だけど…」なんて言うんです。

 私にとって、宮畑君の存在はこんなに大きくなっているのに!と思った私は、ついつい、「そんなことは、絶対にありませんっ!!」と叫んでしまいました。


 あー、、、超恥ずかしいです。これこそ、穴があったら入りたいという気持ちです。でも、やっぱり宮畑君は優しいです。さらっとその言葉を流してくれて、食べ終わったお皿をへ返却口に戻してくれました。


「さあ、行こうか。チェックインしよう」

「はいっ!」


 今から私の気持ち探しの旅が始まります。




To be continued…

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