第3-7話

ドータ「おきろーー!!!」




ドータちゃんの目覚ましで僕は起きる。ぐっすり眠ってたようで今回はドータちゃんの気配に全く気付かなかった。




アキラ「おはよう、ドータちゃん。」




ドータ「おはよう!」




ドータちゃんに腕を引っ張ってもらいながら、自分の体を起こした。そして物置小屋から出た後も短い距離ではあったが、ドータちゃんと手を繋ぎながらファルザ家に向かった。




家に到着すると、僕は扉を開けて二人に挨拶した。


アキラ「おはようごさいます。」




ファルザ「おう、起きたか! まあ、座りな。」




マーザ「おはよう。さあ、食べましょう。」




皆揃ったので朝ご飯を食べ始める。本日の献立はパンとスープと牛乳だ。これがファルザ家の普段の朝メニューみたいだ、先日の献立は客人仕様らしいな。




ファルザ「なあ、アキラ。お前ここで働く気はあるか?」


食事をしている最中に突然言われたので驚き、少し蒸せてしまった。




アキラ「突然どうしたんですか?」




ファルザ「いや、ドータがお前に懐いてるってのもあるが、泊まる場所無くて困ってるんじゃないか?」




アキラ「ええ、まあ。この後は宿屋にでも行こうと考えてました。」




ファルザ「でも、蓄えもそんなに無いんじゃないか?」




アキラ「確かにそうですね。」


現在の所持金は、一年持つか持たないかぐらいだからな。




ファルザ「だったら、ウチで働かないか? 給料出せるかわからんが、一日三食は保証するからよ。寝泊まりは小屋になっちまうが…。」




アキラ「……マーザさんはいいんですか?」




マーザ「ええ、昨日の夜、主人から聞いたわ。私もいいわよ、後はアキラの気持ち次第だけど。」





うん、給料が出ないかもしれないが拠点を確保、出来るのは嬉しい。それに、異世界を探索するにしても手掛かりが無いので、この区域を調べてからでも遅くない。ただ問題が…




アキラ「働くといっても、僕、何にも出来ないですよ?」




ファルザ「ああ、別に大丈夫だぞ。教えてくつもりだし、それにこちらも胸を張れる待遇じゃないしな。」




マーザ「それもそうね。だから、もし合わなかったら辞めればいいだけだから。」




アキラ「…本当にいいんですか?」




ファルザ「おう、それにアキラが来たらウチも賑やかになるしな!」




アキラ「……それでは、改めてよろしくお願いします。」




ドータ「よろしく、アッキラー!」


こうして僕の異世界での勤務先は決まった。




働くことになったので身支度をした。衣類などは物置小屋の棚にしまわせてもらい、金貨が入った袋は見つけにくいように棚の下に隠させてもらった。




仕事の内容はファルザさんに聞きながら行った。井戸の水汲み、伐採、薪割り、牛のブラッシング、搾乳、開墾作業、収穫、種蒔きetc 一つ一つの作業が大変だった。技術や力を使う仕事ばかりなので、楽できる作業が何も無かった。ミスをしたり、遅かったりするとファルザさんに強く言われる事もあった。そして、毎日朝から晩まで働いていたので、一日の終わりになると倒れそうになっていた。




だけど、充実していた。




夜になるとファルザさんの晩酌に付き合ったり、マーザさんに労いの言葉をかけてもらい介抱されたり、ドータちゃんと人形遊びをしたりと、一日一日が楽しい。疲労が苦痛に感じない。一日が24時間じゃ足りない、30時間ぐらい欲しい。寝床につく度に明日になるのが待ち遠しい、もっと皆と過ごしたい。そんな感情が湧き上がる。




何だろうな、家族が出来た感覚に近いのかな? 三人とも、いい人なので心が暖かくなり、一緒にいるだけで自然と笑顔になる。





異世界の居心地が良すぎて、こんな生活が続くと思念体の賭けもあまり気にならなくなり、賭けに負けてもいいかな? と考え出した。 

まあ、いつかは賭けに本腰を入れる時が来るかもしれないな。もし、賭けに勝ったら願い事の内容はファルザ家の幸せを願うのもいいな。あるいは何かプレゼントを贈ろうかな? ファルザ家の隣に僕の家を建てて、ご近所さんになるのもいいな。と一人妄想して、ほくそ笑んだ。


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