第2-2話

歩き始めてから2時間は経ったかな。途中、休み休みで行ったのでそこまで体力は消費しなかった。僕はやっと頂上に辿り着いた……、と思った。いや頂上というのは合ってるのか。頂上で見た景色は山だった。正確には沢を挟んでまた山があった。つまり、今度は山を下ってからまた登らないといけないのだ。山をもう一つ越えないといけないのか。他の角度の風景も見たが木が生い茂っているのであまり見えない。少し見えた所だと紅葉ぐらいしか見えず、人里らしきものや煙も見れなかった。かといって、もと来た道をUターンするのも、勿体ない気もするし悔しい。


よし、とにかく今は水が飲みたい! 沢のとこまで行けば川もあるかもしれない。他の道は水がありそうな感じがしないしな。だから沢の道を行こう。最悪、無くてももう一度登山すればいいだけだ。とポジティブに考えてみた。だが、気付いたが地図ぐらいは初期装備に付けてくれてもよかったんじゃないかと。明らかに転移する位置は間違えてるだろと。僕はまた思念体を恨むことにした。


沢に下る道と決めてからは今度は足取りが軽かった。先程の登り道と違って今度は下りだからな、それにもしかしたら水も確保できるかもしれない。自然と早足になり、加速づいてきたら調子に乗って、少し走ってみた。


結果、靴の踏ん張りが効かず、お尻からコケてしまい2m程、転がりながら落ちた。


痛い! 頬を枝で擦ったか、擦り傷が出来た。ズボンの裾を捲ったら太ももが少し痣になった。それに、ズボンのお尻部分も今の転倒で土が付いて茶色くなってしまった。傍から見れば漏らした感じになってる。落ち着いていこう、骨折とかしたら動けなくなるしな。……とは考えているが気持ちが早ってしまう。


水、水、水!!! 水が飲みたい! 喉が渇いたんだよ!

そんなこんなでいいペースで下山してると、風で葉が揺れる音に混ざって、水のせせらぎが聞こえた気がした。沢に近づくにつれ、段々と川原らしき岩肌が見えてきた。期待が持てそうだぞ、僕の予想が当たったか!?


沢の手前まで来ると、石しか無いせいか雑木等は生えておらず、障害物が無いお陰で視界が拓けてきた。そしてお目当ての川も見えてきた。


近づいていくと川の周囲の地面がどこも崩れていて、2mぐらいの段差になってた。だが、気にせず足から滑落する形で降りたら、またお尻を打ってしまった。今度は地面がゴツゴツした石だから結構痛い!


でも、川だ! 水だ! よかった。自分の勘を信じてよかった!

小川で水深も浅い。僕は両手で掬う形をとり川に手を入れる。冷たっ! 気持ちいい。そしてそのまま掬った水を口に運んだ。


美味い! ああ、喉が潤っていく。体が水を欲しているのがわかる。僕は何杯も水を飲み続けた。時々、砂利や小さい木片が混ざって口の中に入ったがあまり気にする事も無く、とにかく飲んだ。1リットルぐらい水を飲んだかな、こんなに水を飲んだのは生まれて初めてだ。ついでに、汗をかいていたので顔を洗った。頬の擦り傷に少し染みたが気分がサッパリした。


気分を新たに歩き出したいとこだが、次は食料が欲しいな。水を飲めて安心したら今度はお腹がへってきた。


でも食べられる木ノ実なんて知らないぞ。道中、キノコが生えてたりもしたがライターも無いから、生で食べるのはリスクが高すぎる。それに毒キノコかもしれないし。


とりあえず、川に沿って歩きながら食べ物を探してみよう! 川原を歩く方が障害物が無い分、体力の消耗が少ない。それに運が良ければ人里に辿り着ける、ついでに食べ物も探せる! 完璧なプランだ、これでいこう。


進むにしても川の下流と上流どちらに沿って行こうかな? 下流にしようかな。道も、やや下りだから楽だろう。そして僕は川原を歩き出した。歩いてから15分ぐらいで林に目をやると赤い実が生ってる、僕の身長ぐらいの小さな雑木を見つけた。近づいてみるとサクランボ程の大きさのリンゴの実がついてる。


(異世界オリジナルの木ノ実かな?)と思いながら、実の匂いを嗅いでみる。すると、フルーツ特有の香りがしてきた。恐る恐る、少し囓ってみた。酸っぱいがリンゴの味がする。食べられそうだ! そして一粒を口に頬張り、芯の部分は口からプッと地面に捨てた。

もう一粒を手に取り、口に入れて食べた。


グニュッ 嫌な食感と苦い味が口に広がる。手に先程の実を口から出すと、実に黒い穴が開いてるのがわかる。虫食いだ。恐らく、今、僕が噛んだのは虫だったのだろう。そう考えると不快感に襲われ、唾を何度も何度も吐き捨てた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る