第11歩 ノリノリでごにょごにょ
「なんかいつもより静かですね、青咲さん。いつもなら、自分の家のように好き勝手してるのに」
「だって、君が話があるとかいうから、身構えているんだ」
身構えているって、普通本人には言わないよな。
「話ってあれだろ?俺たちが嘘ついて風吹を検証に巻き込んだ……」
「うぅ」
話しながらいぶきが涙目になるから、色々質問しづらい。
「なぜ日雀君を検証に巻き込んだかは言えないが、いぶき君の負担を減らすためとはいえ、君を巻き込んでしまったことは謝るよ。申し訳ない」
青咲さんが急に立ち上がって、ぼくに頭を下げるから、頭がバグって、言葉が何も出てこなかった。
「整理すると、ぼくが青咲さんのサポート役として必要だった。そのために、まずは、ぼくが適任か知るためにいぶきを使って恋人になった。……あれ、でもいぶきとぼくは、しばらく会ってなかったとはいえ友達ですよ?」
「それはまあ別にいいじゃ———」
「あーそれは、いぶき君が、日雀君と会うのが久しぶりだから緊張しすぎて声かけられなかったんだよ。だから、私が、初対面の相手として彼女になってみれば?と言ったらいぶき君がノリノリで」
「青咲さん!なんで全部言っちゃうの」
やっぱり青咲さんのシナリオだったのか。というか———
「いぶき……ノリノリ」
「違う。俺は別に、いや、彼女になってみたかったというかなんというか」
「そこは完全否定しろよー」
「ご、ごめん」
「まあ、とりあえず、日雀君と検証がしたかったんだよ。はじめましては面白い方がいい」
「人の心をもてあそぶのは、面白くないと思いますけど。まあ、引きこもりだったから、きっかけには、なりましたけど」
青咲さんを褒めるみたいになるのはなんか嫌だから、ごにょごにょ喋っていたら、青咲さんはふふっと笑って、すくっと立ち上がり、走って帰っていった。
「あっ!青咲さん!まだ話は終わってないですよ!……はあ。じゃあ、いぶき」
と呼びかけたら、いぶきまでいなくなっていて、仕方がないから、この件は一応一件落着、ということにしておく。
「穏やかな日常に戻りてー」
なんて言ったぼくの口角は、不思議と楽しそうに上がった。
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