第10歩 地球と戯れる

「ねぇ、青咲さん」


「なんだ、日雀君。……こっ、怖い顔しないでくれよ。確かに、やり方が悪かったよ。君の恋心をもてあそんでしまって」


「違いますよ。違わないけど!そうじゃなくて、ここですよ。ここ!ぜんっぜん海じゃない。なんなら、ぼくの家の前!ちょい遠回りして、近所の公園!」


「だって、いぶき君も日雀君も車も免許も持ってないし……そういう、移動系の能力持ってないだろ?君ら」


 この人、ぼくらをなんだと思ってるんだ。


「青咲さん、海と公園の共通点は?」


「風吹ー!この木、かなり落ち着く!」


 さっきから姿が見えなかったいぶきは、なぜか木に抱きついていた。


「何やってんだあいつ」


「アーシングだよ日雀君!これも君たちに……だから顔がこわいって」


「こういう顔ですよぼくは。というか、アーシング?わかるようなわからないような」


 言葉的に、地球と関係あるのかな。


「アーシングは、簡単に言えば、身体の中に溜まった電気を外に流す健康法だ。いぶき君みたいに、木に抱きついたり、こうやって私みたいに素足で土に触れたり、ガーデニングで土と戯れると、身体から電気が放出されるんだ。身体が楽になるそうだよ。色々な疾患の人が、身体が少しでも楽になるように治療としてやっているみたいだが、精神が不安定な時も、いつもの体調不良の時もやってみるとすっきりするらしい。……あれ、日雀君?どこいった」


「あー。青咲さん。まだ喋ってたんですか?これいいですね。日陰で裸足で土にごろん。猫の気持ち、いや、犬の気持ちがわかる気がします」


「そ、そうか。……手伝わせておいてあれなんだが、そろそろやめておこうか」


 青咲さんらしくないな。少しは反省して……。


「わぁ。めちゃくちゃ見られてた」


「どした風吹」


「いや、小さい子が」


「あっ…………」







「と、というわけで、2人ともありがとう。いぶき君にはまた資料作ってもらうとして、では私は上に報告を———」


「青咲さん」


「な、なんだ」


「ちょい話があります。いぶきも。ぼくの家にどうぞ」


 帰らせないぞ。だって、この状況さっぱり意味不明だもん。

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