第8歩 ど忘れと再会と再開

 あー。あーー。思い出しただけで、赤面してしまう。あの空気感が……


「恥ずかしいーーっ」


「うるさいぞ、日雀君」


「んなっ。いたんですか、青咲さん」


 当たり前だろ?みたいな顔をして、ぼくの顔を見てくる青咲さんは、相変わらず自分の家のようにぼくの部屋でくつろいでいた。


「言うつもりなんてなかったのに。微笑ましく、見守るつもりがっ」


「まあ、いいんじゃないのか?あの2人は、関係を進められずにいたんだから、よくやったよ日雀君っ……ふふっ」


「わっ、笑ってるじゃないですか。あーっ!恥ずかしすぎる」


 結婚すればいいのに、なんてぼくが言うことじゃないのに。やらかしてしまって、本当に恥ずかしい。


「あっそうだ。恥ずかしくて、赤面しっぱなしの日雀君。実は、君に再会してもらいたい奴がいるんだが」


 足をじたばたしながら、青咲さんの話を聞いていたから、適当に聞いてしまって、内容が全く入ってこなかった。


「はい?」


「まあ、会えばわかるよ」


 そんなことを言って、青咲さんはぼくの部屋を出た。


「えっ、会うって今からですか?ちょっと、待ってください青咲さん!」


 そこら辺にあったTシャツに着替えて、靴も適当に履いて、急いで青咲さんの後を追った。まったく、青咲さんは急に動き始める。







 少し頭に文句が浮かんだが、青咲さんに追いついてからは頭の中は違和感でいっぱいだった。青咲さんがもうすぐだと言ってから数分後、何だか懐かしい場所に来た気がする。


「日雀君、ここだ」


 ぼくが住んでいるアパートと同じような、古くもなく新しくもない建物の2階の一室の前に来た。インターホンを鳴らし、男性が出てきて、

青咲さんが名前をど忘れし、紹介できない間に、ぼくの記憶がばばばっと戻ってきて……


「いぶき!?!?」


「おっ……おう風吹」


 数年ぶりの再会である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る