第6歩 うる静かな検証の始まり
大きな一軒家だった。桃伽さんの家に来る途中、白腹さんが桃伽さんに今から行くと連絡していたが、通話を終えた白腹さんがしょんぼりしていたのを見て、少し嫌な予感がしたが、すぐにその正体がわかった。大きな一軒家の大きな玄関扉を開けた瞬間、少しイラついている桃伽さんが出てきて、すごく小さな声で、何か伝えてきた。
「どうしたんですか桃伽さ……」
「ちょっと、しーーっ!」
「えっ」
「赤ちゃんが寝たとこなんだ。ごめん、みんなも来ていたとは。ま、入ってよ」
白腹さんだけではないと分かって、桃伽さんは気まずい顔をした。白腹さんには、ふんっと言って、ぼくたちを家に入れた。そんな桃伽さんを見て、青咲さんは苦笑しながらずかずかと家の奥まで行ってしまった。
「青咲さんっ」
ぼくは小声で呼びかけたが、青咲さんは戻ってこない。
「なんかすいません」
「ははっ。風吹君、ここは一伽ちゃんの家でもあるんだから、好きにさせてあげてよ」
「あっ。そうでした」
桃伽さんに言われるまで気がつかなかった。2人は双子で家族なんだった。
「そうですよね。実家なんだから当たり前か」
「ううん。ここは、実家じゃなくて、白腹さんの家」
「えっ!?」
予想外だった。まさか、白腹さんの家だとは。
「風吹君ごめん。言ってなかったね。僕、桃伽ちゃんと一緒に住んでいるんだ。元々僕の家なんだけど、広すぎてね。3人に使ってもらおうと思ってたら桃伽ちゃん親子だけ来て、一伽ちゃんは来なかったんだ」
「ああ、たぶんそれは青咲さんなりに気を……」
「日雀君。ちょっとうるさい」
青咲さんにお腹をつつかれて、最後まで言えなかった。よっぽど桃伽さんたちにうまくいってほしいと言うことが恥ずかしいのだろう。青咲さんがくっつけば?とか言えば、この2人はうまくいくと思うんだけど。
「……君もそう思うか」
「……はい」
小声で青咲さんに言われて、素直に返事をしてしまった。もしかして……。
「今、【相手の言いたいことをつかむ】能力を使って、君の考えていることはお見通しなわけだが、やはり、あの2人、くっついたほうがいいよな」
「そうですね。くっついたほうがいいですけど、なんですかその能力。某人気アニメのかわいい子じゃないんだから、そんな能力使えないでしょ。それに、いつこっちに戻って来たんですか」
「そ、それは……」
「ちょっと、何こそこそ話し込んでんの」
青咲さんが痛いとこつかれたという顔をしながら桃伽さんに謝った。
「ごめん、桃伽。ちょっとな。……まあ、それはそうと用事はすんだのか?」
「あ、うん。ちょっと買いたいものがあって。赤ちゃん連れてないと難しくて、白腹さんに公園に来てもらっていたんだよ。あそこなら、仕事場とお店から近いし、この家からも近い」
「なるほど」
「それで、家で何の検証やるの?」
確かに、まだ内容を決めていないというか、聞いていない。
「青咲さん、何をしましょうか。というか、何するか決まってます?」
「うーん、そうだな」
「それなら……」
桃伽さんが、バケツやら雑巾やらを持ってきて、ぼくに手渡してきた。
「掃除がいいよ!」
「掃除……」
ちょっと、ほんのちょっとだけ面倒だなと思っていたら、青咲さんが家を飛び出した。
「あっ青咲さん!どこに……」
「また逃げた」
ぽつりと桃伽さんが言ったので、追いかけないでおいた。あー、もしかして、この家に一緒に住まないのって、これが理由か。
青咲さん不在の検証が始まる。パート2?
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