Day23 ひまわり
祖母の遺品整理のために押入れの中を出してあれは要るこれは要らないと一家総出で選別していた。その途中で、祖父母が若かった時のアルバムが出てきて、休憩がてら私と祖父はそれを眺めている。
アルバムの最後のページに一際目立つ写真が一枚貼られていた。
ひまわり畑で微笑む男女はひまわりより眩しく写る。若い二人はどちらも美形。こんなカップルがいたら周りは羨ましいことこの上ないはずだ。
随分色褪せている写真だが、いつ頃のものなのだろう。私はそう訊いてみた。祖父は懐かしそうに答える。
「結婚したばかりのものだよ。隣の村に大層立派なひまわり畑があってねぇ。そこへ行った時に撮ってもらったんだよ。ひまわり畑にはそれから毎年行っていたんだ」
しかし、表情が一変して祖父は言った。
「今年も見に行こうなって話してた矢先にな……」
言葉はそこで止まる。
突然訪れた『終わり』はできるはずの思い出を一つ、奪っていった。
私はアルバムをそっと閉じる。祖母はもう彼の隣にいないのだ、と考えると少し胸が苦しくなった。
『終わり』は悲しいものらしい、とその時分かった。
悲しいだけではなく、きっと何か意味がある。祖母がいたら、そう言いそうだ。意味があるのだとしたら、どんな意味だろう。考えてみればみるほど、何故祖父を置いて逝ってしまったのか、という思いが強くなる。
私が『終わった』時も、こう考える人がいるのかもしれない。では、私はその人たちに悲しい思いをさせないためだけに生きていくのか?そんな思いをさせたくない、と私は本当に思っているのか?
脱線してしまった頭の中を正して、私はアルバムをしまった。
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