Day22 メッセージ

「咲紀、箪笥からおばあちゃんの手紙が見つかったって」

 母が焦った様子で勉強中だった私に声をかけた。

 居間へ行ってみると、ちゃぶ台の上に封筒が数枚置いてあった。封筒にはそれぞれ宛名が書かれており、私宛てのものもある。どうやら祖母は、家族へ向けた手紙を遺していたらしい。

 私宛ての封筒を手に取り、封を切る。便箋にはこう書かれていた。

『全てのものには必ず意味や価値があります。残念ながら、どれだけ意味や価値があっても必ず消えてなくなる時が来るのです。その時にも意味はあるし、価値も存在します。しかしながら、一般化された「消滅の意味や価値」について考え、一つの答えを出すのは大変難しい。咲紀、答えは一つではありませんよ。』

 その時、私は思い出した。遥か昔、祖母に『終わり』について尋ねたことを。

――おばあちゃん、なんで人って死んじゃうの?

 脳裏で幼い頃の私が祖母に問いかける。小柄な祖母はふっと微笑んでこう言った。

――それは咲紀の中に答えがあるはずだよ。

――私の中に?

――そう、咲紀の中にさ。考え続ければ、いつか、分かる時が来るよ。

 祖母がそんな他愛もないことを覚えていて、それについて手紙を遺しているとは思ってもいなかった。

 まさに今の私を『見て』、今この場で語りかけられているようだ。

「答えは私の中に……」

「お姉ちゃんの手紙にはなんて書かれてたー?」

 手紙を見せろとせがむ真衣。隣で騒ぎ続ける妹に目もくれず、私は祖母の遺した『問い』を前に呆けていた。

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