Day18 群青

 姉妹揃って群青色のワンピースを着て、私は母と朝食後の皿洗いをしていた。一方の真衣は居間で祖父に遊んでもらっている。

 このワンピースは母が少し前に買ってきたもの。真衣にねだられて今日着ることになった。

 私は皿を拭きながら言う。

「歳の離れた姉妹が揃って同じ服着てるのって、小さい子みたいじゃない?」

 別にお揃いが不満な訳ではなかったが、なんとなく気恥ずかしさはあった。

 丁寧に皿についた泡を水で落としながら、母が微笑む。

「親にとって、子どもはいつまで経っても小さいままだから」

 とはいえ、と母は続ける。

「なんだかんだ言って、真衣と一緒に着てくれて、ありがとうね」

 母から濡れた皿を受け取る。

 このワンピースの群青ように深く強く主張することがあまり得意でない私だ。自分がないから他人に言われるがままなのだと思う。流されながら生きていくのは本望ではないが、今の私にはこうすることしかできない。

 私の周りの人間たちはどうして生きているのだろう。誰かのため?それとも、自分の目標があるから?

「ねぇ、お母さんは何のために生きてる?」

 どうしたの、と母。理由は深く聞かないで、と答えを急かす。

「咲紀と真衣とお父さんの幸せそうな顔を見続けるために生きてる、かな」

 そう母は言った。

「でも、無理して幸せそうにしてくれなくていいのよ?幸せだと思ったときには自ずと顔に出てくるものだから」

 そういうものなのだろうか。

 私は少し疑問に思いながら、皿を重ねた。

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