Day14 幽暗
田舎の夜は、本当に真っ暗だ。電灯を消してしまえば、光は空にしか存在しなくなる。
私は幽暗な客間の布団の上で、身を屈めていた。隣では母と真衣が寝ている。
昨日の疑問を反芻した。
――私はなぜ、『終わり』を迎えようとしているのか。
一日中このことばかり考えていた。はっきりとした理由は分からないままだ。
終わりたいと願う理由が明確にあるわけではなかった。ただ漠然とした希死念慮を抱いてそこに立っている。それは訳を考え始めた今も変わらない。
やがて向こうからやってくる『終わり』。人が『終わり』を迎えても、世界は変わらず動いていく。それがどれだけ偉大で人々から尊敬される人だったとしても、世界は止まらない。そしていつか、忘れ去られていく。悲しいことだとは思うが、そういう風にこの世はできている。
だから、私がこの世から巣立って行っても、私のことを記憶に残しておいてくれるのは一部の人のみで、その人たちがいなくなってしまえば私は無に還ることになる。
あぁ、そうか。私は生きる意味が分からないから『終わり』を迎えようとしているのか。
死ぬ意味も分からないのに、よく言ったもんだ。私は暗闇で独り苦笑する。
生と死の意味。きっと考え始めたらキリがないことなのだろう。それでも私は気になる。私が生きる意味と『終わり』の意味が。
今日はもう考えるのを止めよう。
私は布団の中に顔を埋め、目を閉じた。
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