Day7 天の川
七夕当日は朝から雨だった。
晴れていれば、満天の星空が望めたらしいが、今日は生憎の豪雨。天気予報によれば、台風が接近しているそうだ。勢力はそこまで強くなく、上陸してもすぐに温帯低気圧に変わってしまう予報だ。
いつもは開けっぱなしの縁側も雨戸を閉めて対策済み。
誰よりも空を見上げ天の川を見ることを楽しみにしていた真衣は不貞寝していた。
ここでは晴れている日はいつだって天の川を見ることができる、と祖父に説明されていた真衣だったが、『今日じゃなきゃ意味がない』と泣き騒いでそのまま寝てしまった。
年に一度の織姫と彦星が再会するはずだった日。どうやら今年は会えそうにない。年一回しか会えず、しかもそれが雨のせいで無しになるなんて、私が織姫だったら発狂していただろうな、と思う。
とはいえ、これは御伽噺。天の川を挟むベガとアルタイルは、どう頑張ったって会えはしないし、そもそも、星に逢瀬なんて概念はない。誰がそんな話を創り出したのだろう。
――咲紀ちゃんって生きてて楽しい?
昔、織姫と彦星の話に味気のない回答をした時に、こう言われたことがある。
楽しくなんかない。そうじゃなけりゃ、「終わり」を迎えたいなんて思うわけない。
私は雨戸に立てかけてある七夕飾りのついた笹に目をやった。
年に一度でも楽しみのある織姫になれたらどれだけいいか。私はため息をついて、お茶を啜った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます