Day5 線香花火
「お姉ちゃん、花火もらったー!」
夕飯の後に、散歩に出かけた祖父と母、妹が線香花火を手に持って帰ってきた。
庭に出て、私たちは早速、線香花火に火を付けた。
こよりの先にぽうっと小さく灯った火の周りを忙しなく火花が散っていく。その姿はなんとなく、人が生き急いでいるように見えた。
「もっとぶぁあって吹き出すヤツがいいー!」
真衣は不満そうにそう言った。母がそれを宥める横で、祖父が優しく呟く。
「夏になるとよく婆さんとやったもんだなぁ」
パチパチと光る線香花火を見つめる祖父は寂しそうだった。隣近所から譲ってもらっては毎年のように線香花火をやっていたのだという。
脳裏に笑顔の祖母が浮かんだ。祖母はどんな思いで祖父と一緒にこれを見ていたのだろう。聞こうにも、もう彼女はいない。
「あっ」
先端の灯りが自由落下していった。これが終わりの合図だ。
私は、その「終わり」が美しいと思ってしまった。儚く散っていく様は、永遠の輝きよりも美しいのかもしれない。
もしかして、「終わり」もそうなのか?……いや、全ての人の「終わり」が美しいとは言えまい。
「終わり」とは一体何者なんだ?
私はもう一本の線香花火に火を付けて、消えゆく様を見守った。
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