Day3 謎
母の実家はいわゆる田舎にある。
典型的な日本家屋には鯨幕が張られ、喪服の人たちが出入りしている。
通夜が始まるまであと一時間。私と真衣は礼服を着て祖母の家の軒先で暇を潰していた。
「あっ、アリの巣ー!」
真衣はそう言って周りにある砂をかき集め、巣穴に詰め込んでいく。
それを見て、ふと思った。何故、人間は他の物に「終わり」を与えられるのだろう。
何にでも「はじめと終わり」がある。でも、人間だけがいずれ迎える「終わり」の時期を決められる。それは自分に対しても、他に対しても。
私も一昨日、夕焼けが綺麗に見えるビルの屋上で「終わり」を迎えようとした。
「終わり」を決められるのは、人間が『神様』だからだと私は思っている。では、どうして物事には「終わり」がある?
「終わり」がなければ祖父のように悲しむこともないのに。誰が「終わり」なんてモノを作ったんだろう?
考えても出てくるのは謎ばかり。
「お姉ちゃん、アリの巣埋まった!」
誇らしげに語る真衣。小学生は残酷だ。
「咲紀、真衣、そろそろ中へ入っておいでー」
縁側から母の声がした。
……謎はしばらくその辺に置いておこう。
私は埋め立てられた蟻の巣を凝視している真衣の手を引いて、家屋の中へと入っていった。
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