Day2 金魚

 家に帰ると、妹の真衣が金魚に餌をやっていた。

 昨年の夏祭りで妹が獲ってきた金魚。橙色のヒレがヒラヒラと水中で踊っている。


「明日からおばあちゃん家に泊まるんだって!」


 居間から顔を出した父曰く、母方の祖母、つまり母の母が今日亡くなったらしい。母は実家とその父の様子を見に行くために一足先に田舎へ帰ったのだという。


「明日、お通夜があって、真衣と咲紀は七月末までおじいちゃんの家でお母さんと泊まることになったんだ」


 どうやら、祖父は祖母の死を受け入れられず、意気消沈しているようで、心配だから今月いっぱいは私たち三人でその面倒を見るということになったようだ。

 その間、真衣は小学校を休む。一方の私はというと、スクーリングのない通信制高校に通っているため、休みの心配は必要なかった。

 父は私に近づき、耳打ちをする。


「咲紀も最近疲れてるみたいだったから、リフレッシュしておいで」


 親の目は騙せないんだなぁとつくづく思う。私は頷いて、二階の自室へと上がっていった。


「パパ、真衣がおじいちゃん家にいってる間、ちゃんと金魚にご飯あげてね!」


 階下では真衣の元気な声が涼しさの中で響いた。

 

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