第20話 シスコンは何を想う

「おっすおっすー」


「上がったんですねお風呂、ふふふ。今日は短かったですね」


風呂上り、海翔くんは水も滴るいい男——

といった具合でしょうか。


湯で温められたのか頬に少し赤みがかかっていて否応にして私の胸が高まってしまう。普段ならこんなことあるはずがないのに。

これも全て彼がここに帰宅したときの容姿に起因するのだが…。


「それにしても海翔くんが私にショートケーキを買ってきてくれるなんて、一体どうしたんですか?」


「なんだよそれ、けち臭いお兄ちゃんみたいじゃないかよ」


ふふふ、とまた笑みがこぼれてしまう。

別に何も私に買ってきてくれないわけでもないのだが…何かしらの祝い事の日かと思ったが特段思い当たる節はなかった。

とすれば、海翔くんが私にショートケーキと言う名のお供え物を献上した理由は――察しのいい私は理解した。


「頼みがあるんだがいいよな?楓の好きなショートケーキも買ってきたことだしな?」


「私が食べてから言うのはずるくないですか?」


「なーに、タダより怖い物なんてないんだよ楓…」


「ぷー!」


なぜか妙にドヤ顔していう彼に思わず頬が膨らむ。


「フグの真似でもしてんのかよ?」


そう言って遠慮もなしに私の膨らんだ頬を突いてきた。


「ふーー!!」


一つは遠慮なく乙女の頬を突いてきたことに対する「ふーー!!」

もう一つはなぜか妙に手馴れていたことに対する――嫉妬。


「にしても楓はかわいいなぁ」


「な、なんですか急に、私を褒めても何もでませんよ!」


「可愛いほっぺたは膨らむけどな!」


「むー!あ、うーー!」


またしても私の頬が膨らむ。

海翔くんに言われたそばなのですぐにしぼませて不満の唸り声をあげる。


「さ、お遊びはここまでにして、だ。頼みがあるんだが聞いてくれるよな?」


「私が断れないって知ってるくせに…けどまぁ、いいですよ。何がお望みですかなお兄ちゃん?」


何故か耳が赤くなっている海翔くんを一瞥して話し合いの席に腰掛ける。

ちょっと雰囲気を出すために手を顔の前に組んでみたりして。


「そ、それでだな頼みって言うのはだな…」


妙に上ずっている声に耳を傾けていると……


「明日ので、デートの服装を選んでもらえると嬉しいんだが…いいでしょうか?」


斜め方向からの攻撃に私は席から転げ落ちてしまった!


「お、おい大丈夫か!?」


「えぇ大丈夫ですよ…ちょっと心に深刻なダメージを負っただけですから」


困惑顔を彼を横目にはて、と思案する。

ここ最近の彼は気だるそうにしているが、どこか楽しそうにしている節があった。

何があったのか、それこそ今日の料理中考えていたのだがよもやよもや、女だったとは驚きである。


さて、どうしたものか。

お世辞にも海翔くんはファッションのセンスがあるとは思えない。

それこそ中学生のセンスで止まっているのだ…

上下学校のジャージや、灰色一色の服装。

かと思えばどくろの模様が入った黒の服装に痛いネックレスを合わせる組み合わせなどなど…正直言って海翔くんの整った端正な顔でもやばい恰好なのだ。

悲しいかな、私と一緒に選ばないとまともな格好をしないのだ。

誰とも分からない馬の骨にうちのお兄ちゃんのかっこいい姿を見せなければならんのか。

あなたの前に現れるかっこいいお兄ちゃんは私の血涙の結晶なんですよと、名も知らない女に恨み妬み僻みを心の中で呟く。


「楓頼む!お兄ちゃんを救ってくれ!大事なデートなんだ!」


「はいはい分かりました」


「ありがとう楓!天使…いや女神だ!!」


「デート」という単語が出てきたときに思わず手が出そうになったのだが、海翔くんの一生懸命な懇願に気圧され、しぶしぶ協力許可を出してしまった。

つくづく甘い義妹だなと思う。


・・・今夜は長くなりそうだな…。





【side/胡桃沢修くるみざわしゅう


俺のお姉ちゃんは大きな姿見に服装を自分に合わせては外し、合わせては外しとかれこれ二時間行っていた。そろそろ頭がおかしくなりそうだった。


「ねえねえ~しゅうは何がいいと思う~?」


「もう、いいんじゃないかなそれで」


「え~でもな~、こっちもいいかも!」


そう言ってお姉ちゃんはクローゼットへと繰り出しまた新しい服装を見繕ってくる。あぁ…終わりが見えない…。


こうなった経緯を語らせてほしい。いや語らせてください。


部活動を終えて疲れ切った俺は愛するお姉ちゃんのいる筈の家へと帰ってきたところからはじまる。

出迎えてくれたのはいつも元気溌剌の琥珀お姉ちゃんではなく、どこか不安げな顔をしたお姉ちゃんだった。


「どうしたの!?なんかあったの!?」


耳元に口を寄せてきた。

別に誰に聞かれようともこの場には俺とお姉ちゃんしか居ないのに。

やっぱりどこか抜けている。


「それがさ~ゴニョニョゴニョニョ。であるからして~かくかくしかじか。」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


お姉ちゃんの口から飛びてた衝撃怒涛の言葉を聞いて思わず叫んでしまった。

まず驚いたのが明日お姉ちゃんがどこの馬の骨かも知らない男とデートに行くということ。そしてもう一つが洋服選びに手伝ってほしいというとのこと。


洋服選び…おっと変なことを実の姉で想像してしまった。鼻から血が流れるのを感じた。


(中略)


とまぁ、こんなことがあったわけだ。

俺のお姉ちゃんは控えめに言って天使。街に出れば必ずスカウトにされるほどの。しかもどこか抜けているところもある俺のお姉ちゃん。

はっきり言って不安でしかない。

危ないお兄さんに騙されて行ってしまうユルフワ感があるからだ。


「こっちもいいよね~!海くんはどんな感じが好きなのかな~?」


満面の笑みで明日の服装を決めているお姉ちゃん。

やっぱり天使だ…。しかし気になる不穏なワードが聞こえてきたのを俺の耳が察知。俺がお姉ちゃんの言葉を聞き逃すはずがないのだ。


海くん…?

ほぉ、そいつが俺のお姉ちゃんをたぶらかす屑男か。

海くん、俺は君の事は知らなしあったことがないけど嫌いだね。


中学三年、受験勉強もある。

もちろん志望校はお姉ちゃんの高校だ。当り前だよなぁ?

されど受験、お前はお姉ちゃんとどっちが大事だ?

そうだよな、お姉ちゃんが大事だよな、優先順位が高いよな。

受験勉強<お姉ちゃんなんだよ。


俺は明日のデートへの参戦を心で決めた。

俺がお姉ちゃんをたぶらかすやつを見極めてやる!!



######

ストックないなった。

この作品書いててあれなんですが、ちょっとシリアスめの物語も書きたかったりする。はて、どうしたものか。


伸び具合がよかったら頑張って毎日更新しますね()

夏休みの課題が…ね。

読んでくださってありがとうございますm(_ _"m)

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