第18話 告白の舞台裏②

「いったいどういう風の吹き回しだよ、橘抹白たちばなましろ。」


初めて彼が私の名前をフルネームで言った。

この流れはそういうことなんだろうか…?


「あら、やっと私の名前を言ってくれたわね天音海翔あまねかいと。安心したわ、そっちから紹介してくれるなんて。自己紹介をするタイミングを完全になくしてしまっていたから」


これは私達二人の関係性をしめす会話だ。

決して登場人物の自己紹介では決してない。


「そりゃどうも、それとめちゃくちゃメタいからな。まるで俺たちが初対面かのようじゃないかよ。」


ん~?ちょっと意味がわからない。

けれどもこの流れに付き合うのもまた一興かしら。


「あらそうね、けどあなたの方がメタいからね?細かいことはまぁいいわ。それで私と付き合ってくれるのかしら?」


「さっきも言ったが、いったいどういう風の吹き回しだよ橘」


どうもこうもないのだけれど…

そうね、乗り掛かった舟だわ最後までやり切ることにしましょう!



「そ、そんな。信じてくれないの…?まるで私の告白に何か裏があるみたいじゃない…ひどいわ天音くん…」


「はいはい」


「ほんとなのに…」


「まじそういうのいらんって」


「天音くん、私の事そういう風に思っていたなんて…」


「うん」


「なっ…!私はこんなにも彼方の事を愛しているって言うのに…こんなのってあんまりだわ…」


迫真の演技、決まったわね。

おまけ程度に目に涙も浮かべてやる。


「ごめんって橘!ほら、顔を上げてくれよ!」


ほらきた。

天音くんは焦った様子で私の元へかけてきた。

不味いわ…笑いが抑えられない…!


「ふふふ、いい気味ね天音くん。とっても愉快だったわよ?」


そう告げると彼は一瞬あほっぽい表情を浮かべる。

そしてすぐに怒りのこもった顔へと変化した。


たまらず私は噴出した。


いやぁもうほんと面白いわね!

滑稽ってこのことをいうのかしら!

あーもうだめ。

おちちゅきなさい!


やっぱだめだわwww

笑いすぎて変な文章になってるww




いやぁ笑ったわ、本当に涙が出てきちゃった。

そろそろ話しの本筋に戻らなきゃね。

たしかなんで私が告白したか…よね?

自信ないわ。


「そうね天音くん。あなたの言う通りこの告白には世間一般的なものとは違うわ。」


「だと思ったよ。だとすると……考えられるのは男避けくらいか?」


あってるみたいね。

しかしまぁ、百点の疑問じゃない。

満点は百五十だけどね!けれどそれは私しか絶対分からないからしょうがないわ。

事実上の満点ってやつね。


ここは素直に賞賛の意味を込めて拍手をしましょう。


「まぁ……そうね。一発で私の考えていることを当てるなんて、それでこそ私の下僕に相応しいわ。賞賛の意味を込めて拍手を贈ってあげる。」


露骨に嫌な顔をする彼。

そりゃそうよね、偽のカップルなんて面倒なことやりたくないわよね。

しかしそこは対策済み。


「言っておくけどあなたに拒否権なんてないからね。拒否なんてしたらあなたに色々と屋上ここでされたって言いふらすから。二度と平穏な学校生活を送れるだなんて思わないで。」


天音くん、あなたは気づかないでしょうね。

本当は私の言葉よりもあなたの言葉の方が信憑性があるかなんて。

あなたが学園中、いやそれよりもっと多くの女性に慕われていると同様に、ね。


「けどどうしてまた男避けなんているんだよ。まぁなんとなく予想はつくけど俺が男避けなのは意味わからん。」


確かにそこは話しておかなきゃよね。

目的もなしにそんな提案飲めないわよね。

あ、もう飲み込むしかないのか!

意地の悪い笑みを浮かべているのが自分でもわかる。


しかし彼は何となくと言うかこれしかないだろって感じだ。

まぁ彼がいる所で一回告白されてるし、私の男性関係は大方聞いてるでしょうし把握もしているでしょう。


「そうよ、おおかたあなたの予想通りであってるわ。私って見ての通り完璧美少女じゃない?」


何故か一瞬彼は怪訝そうな表情を浮かべた。

なんでだろうか。

しかし頷いたので言葉を続ける。


「だから毎日のように告白されるのよ。ほんと鬱陶しいことこの上無いわ、身の程をわきまえなさいよ。」


「じゃあなおさら俺は不向きじゃないか?」


何を言ってるのかしら?

あなた以外に務まるとでも――と言おうとして口を閉じた。

彼自身がモテているなんて思っていないのだからわかるわけがなかった。


「いえ、あなたでいいわ。異論は一切認めないから。」


言いたいことは言い終わったわね。

これで彼と私は偽とはいえ恋人関係になったわ。

これで少しは連日の告白もマシになってくれればいいのだけど…


と考えていたところで不意に動かしていた足を止めた。


ここは一人で帰るんじゃなくて一緒に帰った方がいいんじゃないだろうか?

そうして方がより一層効果が得られる…よね。


私は下校に向いてる足の向きをくるりと変え、彼の元へ戻る。


「なにぼさっとしてるのよ、帰るわよ」


そう言って私は彼へと左手を差し出す。


「あの、橘さん?なんですかその左手は?まるで一緒に手をつないで帰るみたいじゃないですか」


??????


「何を言ってるの?そのつもりなのだけれど、なにかおかしなことでも?」


特段おかしなことしているわけじゃなくない?

するでしょ。恋人なら。


「いや、お前は別にいいのかよ」


「私?いいに決まってるじゃない、私が手を差し出したのよ?」


さっきから何言ってるのかしら?

なにか私おかしなことしてる?


「お前がいいならいいけどよ」


そう言い終えると恐る恐ると言った感じで手を握ってくる。

別にとって食ったりはしないのにね。



そうして私たちは帰路につく。

途中で…


「あぁ、だから来たくなかったんだよ………、って痛い!」


と変なこと抜かしていたから足を踏みぬいてあげた。

ローファーの上からだから別に痛くないと思う。




家に帰ってなぜ手を握って帰ってしまったのか自分の行動が訳も分かららず、恥ずかしくてベッドの上で暴れまくるまでがテンプレ……



######

やっと終わった!

幕間ってなんだっけ?

当初の予定じゃこんなに長くなる予定はなかったんですけど…

どのくらいの人が見てくれてるか執筆時点じゃわかりませんが、読んでくれた方ありがとうございます!


ここから多分ですが間髪入れずに二章へと行きます。

一言で表すなら二章は『カオス』…ですかね。


主な舞台は天音くんと胡桃沢さんのデート…のはずがなぜか…

って感じです!

登場人物が縦横無尽に駆け回る…って構想をしています!


コメディ全開で行きますのでもしこの作品が気に入った方は変わらずに読んでいただけると嬉しいです!


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