第11話 大人気アイドルとの邂逅

過去一気分ルンルンの俺。

今なら空すら飛べそうだ。


「いやぁ、顔面偏差値69キタコレ!これで明日のデートも勝つる!」


明日の胡桃沢のデートを控えている俺は、最高の状態で臨むためは確かな従妹のお姉さん…じゃなかった優香お姉ちゃんに髪を切ってもらった。

美人で昔っからモテモテの優香お姉ちゃん。そういえばモテにモテまくったって昔っからずっと聞いてるのに彼氏ができたとかは一回も聞いたことないな。

従妹である俺には言い難いことなんだろうか?

まぁ今はそんなことはどうだっていい。


マジで気分がいい。マジで。

気分が良すぎて馬鹿みたいになってるわ。


これで街中に出たらスカウトとかされんのか?

これは武勇伝待ったなしだな。


「ねー君?」


ほらきた。早速スカウトマンらしき人物からの声かけ。

まだ街中にも入っていないのに、これでは街に行ったら大変なことになるな!

しかし俺は反応しない。正確には一回目では、だ。

一回目を無視し、二回目で嫌々反応することによって「あーまたかよ」てきなことをするのだ!いやぁ、いいね!


「ねー」


やっぱりもう一回無視しよう。その方がいいっしょ!


「ねーそこのかっこいいお兄さんってば!」


かっこいいお兄さん!?

はいそうです俺の事ですが何か?キリッ!


「さっきからどうしたんですか―――!!!」


俺の口からその先の言葉が紡がれることはなかった。

振り向いた先の人物に驚き声が出なくなったからだ。

人間びっくりしたときは声が出ないと聞いていたが本当に出ないとは。


「んー?どうしてそんなに固まっているのかなー?」


「あ、いやだってあの…」


「んー?なになに、私の顔に変なのでもついてるのかなー?」


「顔っていうか…変なのなんていっっっさいついてないんですけど…」


「じゃあ何だって言うんだね、はっきりと言いたまえ!」


そうやって胸を張る

そんなに胸を張られると目のやり場が…


「じゃあ…言わせてもらいますけど…」


「なんだっていいたまえかっこいいイケメン君よ!」


「イケメン君!?あなたってトワ様ですよね…?人気アイドルグループ『TRY』

の…」


トワ様ですよね?

緊張気味に俺はそういうとトワ様と思われしき美少女はそれはもう見てるこっちも慌ててしまうくらいに慌てふためいた。


「わ、私がトワ様だって!?そ、そんな冗談言うなんて君はおもしろいなー?」


必死に取り繕うとしているトワ様。

身振り手振りで確信した。このお方はトワ様だと。

そうと分かればやることは一つ。


―サササ。


「え、どうして離れるの?」


―サササ。


「え?」


―サササ。


「え、ちょっと待ってよ!」


―サササ。


何故か距離を取ろうとする男。

それに訳も明からず近づこうとする美少女。


「ちょっとなんでってば!」


腕を掴まれた。もう死ねる…


「なんで死んじゃうの!?」


「そんなトワ様と近づくなんて恐れ多い…早く私なんてものから離れてください…」


「だから私はトワ様なんかじゃないってば!」


「何を言ってるんですか、このトワ様の1ファンの私の目は誤魔化せません。」


「え!あなたのファンなの?」


「今って言いましたね??」


「え…あ!いやこれは違うんだよ?ちょっと言い間違えただけ!」


苦しすぎる言い訳である。

しかしまじかで俺なんかがトワ様の御顔を拝見できるなんて。

我が生涯に一片の悔いなし!


「しかしそうはおっしゃられてもその美しすぎる銀髪に可愛すぎる御顔おかおはどっからどう見てもトワ様では…」


「え?た、確かに私の髪は銀髪だけどサングラスにマスクしてるから顔はわかんなくない?」


「???」


「そんなに『?』を浮かべないでよ」


「???」


「だからやめてってば…」


「失礼ながら私めから一つ口を挟ませていただきたく…」


「口をはさむも何も私と君で今会話をしてるんだけどね?あとその気持ち悪いオタクみたいなムーヴは止めてほしいかな?」


アイドルのあなたさまが気持ち悪いオタクなんて言っていいんですか?


いいんですねこれが。我々の界隈ではそれはご褒美なんです。


「それでは僭越ながら私から一言言わせていただきたく。先ほどサングラスにマスクとか言う不審者セットをトワ様はしていると言っていましたがそのような装備はトワ様の御顔にはありませんが?」


「へ?」


そういって自分の顔をペタペタと触るトワ様。

それを見てるだけでトワ様の異次元みたいな御顔の良さがわかる。尊い…


「あれ…あれれ!?私の変装セットがない!?」


変装って言うか不審者セットじゃないですかね?


「そうなんです、残念なことにトワ様の不審者セットなんてものは最初からなくトワ様の可愛すぎる御顔が最初からあらわになっておりました…」


「あわわわわ!」


慌てふためくトワ様。可愛すぎる。


「ふー。そうです私こそが今人気絶頂中の三人組アイドルグループ『TRY』のトワなんです!」


開き直った。


「やはりそうでしたか…これでどうにかトワ様のファンを継続することができそうです…」


「私のファンを継続するとは???」


「トワ様の1ファンとして、恥ずかしくない行動ができたかと…」


「行動ってあのサササーって逃げるやつ?」


「はい、そうなります」


「はぁ、そのキモオタムーヴやめてほしいな」


「いえ、トワ様の1ファンとして――」


「トワ様のファン、トワ様のファンってうるさいな!私がしてって言ってもできないの?それでもファンなの?」


「い、いえ…」


「できないの?」


「やります」


「できないの?」


「やります」


「そうじゃないってば…敬語をやめてって言ってるの!」


「はい」


「やめて?」


「わかったよトワ様」


「トワ様って言うのもやめて。私の事はトワって言って」


有無も許さない覇気。

これがアイドルグループのいただきに立つ者のオーラ!


「そうだよ、そういう口調の方がいいよ?」


「なんで地の文が読めるのかは突っ込みません」


「あははは!やっぱおもしろいね君!名前は?」


「天音海翔だ」


「そっかー、私は『TRY』のトワだよ!」


「でしょうね」


「むー、なんかそっけなーい」


素っ気なくしとかないと頭がどうにかなりそうになるんだ。許してくれトワ様。


「それにしてもどうして――」


どうしてこんな場所にいるんだと聞こうとしてまた言わせてもらえなかった。

最後まで言わせてほしい。


なんで言えなかったのかって?

トワ様のポッケから携帯の着信音がなったからだ。


「あ、ごめんね!」


そういって形態をとって話し込むトワ様。

最初はなにー?みたいなめんどくさいオーラをだしていたが二三言言葉を交わしているとトワ様の顔が青白くなっていった。


「え!すみませんすぐ向かいます!」


「どうしたんですかトワ様?」



「ごめん!用事を思い出しちゃった!行かなきゃ!」


それじゃ!と言っては走り出すトワ様。

こけるんじゃね?って思っていると案の定ちょっと躓いてた。

あぶねぇ。


それにしても嵐のような人だった。

どうしてこんな住宅街にいたんだろうか。

野生のアイドルが出てきた!

的なノリだろうか?


まぁいいやと思いスマホでお気に入りのフォルダ―から『TRY』の曲を再生させる。


「やっぱトワ様の声きもちえぇ…」


全力でキモオタムーヴをしながら自宅に帰た。





果たしてこの邂逅に意味はあるのか?

なぜこんな辺鄙へんぴな住宅街に居たのか。

謎は深まるばかりであった。




######

事実上の一章はここで終わりです。


一章は軽い登場人物の紹介?みたいな感じです。

ここからは幕間で橘さんがなぜ天音くんに告白したのか、橘さんが転校してきて告白までの約一か月間何があったのかが綴られています。

「天音くんのイケメンエピソード」やら「もう一人の私ッ!」やら…

これまた全話コメディ全開で駆け抜けているのでぜひ読んでいただきたく!


《追伸》

幕間7話になりました(笑)

物語の根幹なんでしかたない…よね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る