第9話 口は禍の元
みんなはうっかり口を滑らせてしまうことはあるだろうか?
口が滑るとは「大事なこと、秘密のことをうかつにも話してしまうこと」、
言ってはいけないことを口にしてしまうことだ。
例文を紹介しよう。
例えば「母親が、つい口が滑って、僕が小学校6年生までおねしょをしていたことを彼女にばらしてしまった。」
こんなのは最悪だな。自分の恥ずかしい過去をもっともそういうことに理解がなければいけない母親が自分の大切な人、つまり彼女にばらしてしまう。
みんなも似たような経験があるのではないだろうか?
例えば彼女ではなくとも友達に自分の恥ずかしい子供の頃の失敗談を話してしまう。聞いてる友達は面白くおかしく笑えることだろうが、こっちとしては羞恥と母親への憎悪でどうにかなりそうになる。
例えば「彼は酒に酔うと口が滑って何を言い出すかわからないから、あなたが責任をもって飲ませないように気を付けてくださいね。」
こんなのもあるな。宴会の席で気分が良くなり酒に振り回されてうっかりとその場にいるにもかかわらず上司の愚痴や会社の愚痴を言ってしまうとか。
仲のいい人とだったらなんら問題はない。そのうっかり口が滑ったことによる愚痴によって会話が広がることも大いにあるからだ。
しかしこれが会社の大事な席だったら?
例えば歓迎会などだ。何も自分の事を知らない、仲良くない人にうっかり口滑らせてしまったら?感じの悪い人というレッテルを張られることだろう。
こんなことにはなりたくない、ではどうすればいいんだ、うっかり出てしまう。
なんでうっかり口を滑らせてしまうのか。例えば、「日常生活のストレスからイライラしていた」、あるいは、「単に気分が冴えない」、また場合によっては、「何かでコンプレックスが刺激された」など様々な要因がある。
口を滑らせるのを防ぐ対極の対策として、「しゃべらない!」というのもあるが、やはり会話は人間関係を成立させるための重要な要素なので、そういう方向はパスしたい。日常のストレスを上手に発散させて、心の緊張を適度なレベルに保つ事が口を滑らせないようにするのが対策法だ。
とネットに書いてあった。
ここまでだらだらと説明して何が言いたかったというだな…
言ってしまったことはもうどうしようもないってことだ。
「後悔先に立たず」とはまさにこのことだろう。
現実に戻ろう。
俺はうっかり口を滑らせてしまった。
何を滑らせたのかって?
・・・・・・
「そんなわけないだろ!大好きだよ!」
こんなことです…
終ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
偽ではあるが彼女の前で。
不特定多数の自校の生徒がいる前で。
なによりその大好きな胡桃沢の前で。
うっかり口を滑らせてしまった…
俺のこれからの夢の学園青春ライフは儚く消え去ってしまったのだよ…
俺の青春学園ラブコメがぁぁぁぁぁぁぁ!!!
違うんだよ。ほんとは言うつもりなんてなかったんだよ。
俺を信じてくれ!!
などといくら心の中で弁論したところで読者以外には伝わらないんだ…
いっそ書き換えるか文章?
まだ公開していないんだやりようはあるはずだ…
しかし、だ。そんなことをして何になる?
読んでる皆は面白いのか?
答えは否である。断じて否だ。
これはラブコメディだ。
面白くないと意味がない。
なら甘んじて現実を受け入れるしかないんだ。
ふぅー。
「え?えぇぇぇ!?海くんが私の事好き?私のこと大好き?……えへへ~」
二マーっそう言って笑う胡桃沢。かわいい。
これを天使と言わずになんというか。天使は実在する!!
「ふーーーーーん。下僕は彼女の私じゃなくて胡桃沢さんが好きなんだ。ふーーーーん。まぁ別にいいけどね?全然私は気にしてないわよ。」
隣でドス黒く変化する橘を確認!
全然気にしているご様子だな!やってしまった!
「と、とりあえず飯食おうぜ!昼休みなくなっちまう!」
話題転換。世渡り上手になるための必須スキルだ。
「とりあえず飯食おう?そんな事よりも先にすることがあるでしょ?さっさとそこの女から離れなさい。」
バレた?
ここまでの描写で胡桃沢を腕から解放したと思われる描写なんてないよな?つまりずっとこの天使を抱きしめていたことになる。
気持ちよすぎだろ!
おっとワッカさんが出てきてしまった。
とりあえずバレてしまったからには名残惜しいけど離すとしよう。謝罪も忘れずにな。
「ごめん胡桃沢!完全に忘れてた!許してくれ!」
感謝もすこしばかりこめて謝罪する。
・・・・・・
しかし待てども反応がない。
気まずいんだが?そんなことするくらいなら罵倒される方がいくらかマシだよ!
とりあえず胡桃沢の様子を確認。
「えへへ~」
完全に意識がどっかに逝ってるな、間違いない。
不快そうな表情なんかじゃない。ずっとニヤニヤしている。
いや、ニヤニヤなんかじゃないな。ニマニマしている。
これはもう許されたってことでいいんだよな?
いいですよねありがとうございます。
俺はベンチに腰掛ける。
「何しれっとベンチに座るのよ下種。気持ち悪すぎるんですけど。」
おっと辛辣な一言が。
俺の♡にクリティカルヒット!!
「何♡なんか使ってるのよ。ほんと気持ち悪いわ…」
「地の文は読むなよ!」
全く…プライバシー侵害にも程があるだろ。
さっさと弁当でも食おう。
嫌なことは美味しいもの食ってれば忘れる。
「あなたが忘れても、私が忘れないえわ。私の脳内メモリに焼き付けられたから」
「だから地の文を読むなよ!」
相変わらずずっとニマニマしている胡桃沢をよそに俺と橘は葬式みたいな雰囲気のなか、黙々と弁当を食べた。
(生徒&偶然通りかかった先生などの被害者たち)
「「「いや気まず」」」
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